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第90回 美意識の差? 宮大工と船大工

兵庫県有馬温泉で見学会

 先日、新築・天然住宅の見学会が兵庫県有馬温泉であった。ぼくは共同代表だが、交通費が出ないのであまり現場に行けないのだ。でも今回は、岡山の隣の県での主催ということもあり、自家用車で出かけてきた。この見学会が楽しいのだ。詳しくなると、わずかな違いに心躍る。

 今回面白かったのは、その住宅を建てた大工が「宮大工」だったことだ。いつもの栗駒木材の大工は「船大工」だから、ちょっとだけ違う。どちらも木の性質をよく知っていて、木を活かす設計をしているのだが、宮大工はひと味違っていた。

 何が違うかと言えば、一言で言うなら「きめ細かさ」ではないかと思う。船大工ももちろん木の性質をよく知っていて、うまく木の性質を生かすのだが、宮大工はそれをやたらきれいに仕上げる。

 木表・木裏と言って、どちらを表にするかによって木のささくれ度合いが違ってくる。長年使うならやはり木表が上だ。そうしないと痩せてきたときに、足に木片が刺さってしまうかもしれない。

宮大工の気遣い

 そのあたりまでは全く同じなのだが、その後に釘の頭などの金属を見せないところが違っていた。確かに比重などが違う金属は、木の内に包み込むようにしてしまった方がいい。天然住宅では階段のような部分で釘を見ることはないが、宮大工では使った跡をわざわざ木で隠している。その細かさには感心した。

 引き戸の桟には竹が貼ってあった。竹は滑るので、何のメンテナンスをしなくてもよく滑る引き戸になる。床の木の貼り方も見栄えを大事にしていた。

 すごく大雑把にいうなら、宮大工は見栄え、船大工は実用を大事にするようだ。スギには芯が黒い「黒芯」と呼ばれるものがあり、壁に並べて貼ると「白黒白黒で縁起が悪い」などと言われたりするのだが、実のところ強度やヒノキチオールの含有量でも黒芯の方が上だ。だからぼくは好きなのだが、黒芯を貼った床は見えにくいところに隠されていた。
ロフト
階段・手すり
節の少ない杉フローリング
節の少ない杉板の天井
瓢箪のマーク

美意識の持ち方

 比較するつもりはないが、美意識の持ち方が異なるのだと思う。そういえば節ありの板をほとんど使っていなかった。節は強度に関係がなく、むしろ強いほどだと聞く。大きすぎれば強度に影響するが、神経質に枝落としするほどのものでもない。しかし宮大工は気にするのだ。

 その違いよりも重要なのは、乾燥のさせ方や適切な使い方だ。その点で木の性質をよく理解している大工のすることは安心できる。とても大切な職業なのだと思う。今では少なくなってしまったが、天然住宅は必ず大工がしている。
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