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第86回 湿気のない腐らない家

死番虫がつく木材

 前回シバンムシの話をした。詳しい生態もわかっておらず、防ぐことが困難だとも。すると困ってしまう。天然住宅は300年は持つように建てているのだが、これに対処する方法のために殺虫剤を撒いたのでは、元の木阿弥になってしまうからだ。

 ところがシバンムシを調べていくと、多少の法則性に気づく。ひとつは広葉樹を食べるシバンムシが多いことだ。「ケブカシバンムシ」を除けば、スギ・ヒノキなどを食害する種類は少ないことに気づく。そしてシバンムシが食害する木材は、多少なりとも湿気のある木材の方が食べられやすいことだ。

 ということは他の虫と同じく、湿気ある木材に集まり、特に殺菌成分を持つスギ・ヒノキの方が食害されにくいとは言えるだろう。湿気があれば腐朽菌が発生して、木材を腐られてしまうことも多い。その食菌性のシバンムシがいるのだから、木材を乾燥させておくことが大事になると言えるだろう。

高気密化しない

 天然住宅は「高気密・高断熱」ではない。高断熱にはしているが、ビニールで家を覆って高気密にするような建て方にはしないからだ。ではどうするかと言えば、壁の構造を通気性のあるものにしている。水蒸気という極小の気体を、何かで防ぐというのは困難だと思うからだ。ビニールの合わせ目を接着剤でつないでも長く持つものではないし、地震のある日本では揺らされることでビニールには隙間ができてしまう。

 極小の水蒸気は、空気の通れないところでも通り抜けるのだ。そして外気温との違いのあるところで結露して、木材を湿らせてしまう。

天然住宅の壁内

 ではどうしたらいいのだろうか。そのときに天然住宅は「浸透圧」に似た発想をする。湿度をより大きく吸収できる素材があれば、水蒸気はそちらに移行するだろう。水蒸気という極小の気体から見たら、天然住宅が使う木材や漆喰など、スカスカに見えるだろう。当然通り抜ける。その先にウールブレスがあれば、水蒸気をたくさん吸い込んでもベタベタにならないウールの性質のおかげで、そこに吸い込まれるだろう。そして「透湿防水シート」という水蒸気は通すが水は通さない素材のおかげで、水蒸気だけはその外側に出ていく。その外側は外壁との間に空気層を作っていて、水蒸気はより湿度の低い外気に出ていくという造りをしている。

 冬場はやや過乾燥気味になるほどだから、室内の湿度は低い。さらに抗菌作用のあるスギを、その成分を殺すことなく利用しているから、他の建物よりはずっとシバンムシにとって居心地の悪いものにしている。古民家になってもシバンムシの食害は少ないと思うが、こればかりは時間が経たないとわからない。長く使える住まいを建てようと思うと、そんなことまで考えなくてはならない。
高断熱・適気密(夏)
高断熱・適気密(冬)
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