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第68回 住宅教育が必要だ

住宅は衝動買い

住宅教育
 家を買う時というのはどうなっているだろうか。平均的な住宅取得年齢は、三十代の半ばで、それまで住宅など考えたこともない人が多い。そりゃ当然、「購入するのだから」と住宅展示場に訪ねたりするだろう。家電製品を買う時に量販店に行くのと同じように。ところがそこに待ち構えているのは、「アリジゴク」のような販売員だ。よくわからずにおだてられながら地獄にはまっていく。なんと住宅業界では、「住宅購入は衝動買いだ」と言われている。衝動買いに向けていくセールストークが重要で、住宅そのものについての基本的な知識は与えられないままになる。

 これが住宅取得の実際なのだ。だから基礎が頑強さなんて知られないままだ。長年経っても壊れないかどうかなんて知らないままだ。土台に使われる木材がシロアリの嫌うヒバの木材かどうか、それともシロアリの大好物のベイツガ、米マツ、ホワイトウッドなどの外材(外国産の木材)を使っていないかどうかも知らない。構造材が地震に耐えられるものなのか、防火、腐朽菌対策はどうかなんて知られないまま衝動買いされていく。

失敗しないための住宅教育

 ところが、この住宅購入がその人の人生を決定する。人生最大の買い物だし、買わないでいたとしても住宅費は人生最大の支出になっているのだ。日本の住宅価値はたった15年でゼロになり、30年経たずに建替え時期を迎える。同じ木造なのに法隆寺は1300年も維持されているのだ。

 「住宅」に目を向けないでいるのも良いが、確実にその人の人生は蝕まれてしまう。高いけれど、クルマなら次の購入のときに失敗を生かせるのかもしれない。しかし住宅では手遅れだ。購入した時点、もしくは購入しないと決めた時点でその判断の報いを受けることになるのだ。

 「住宅選び」に失敗しないための「住宅教育」、もしくは「住宅リテラシー」が必要なのではないか。ところがハウスメーカーの展示場で待つ「アリジゴク」たちは、我田引水するための住宅の話しかしないだろう。つまり根本的な客観的な教育を受けるチャンスはほとんどない。ぼく自身も天然住宅を始めなかったら、ここまで詳しくなることもなかっただろう。

住宅リテラシー

 だから客観的で中立的な「住宅教育」が必要なのだ。天然住宅は非営利事業として運営している。非営利だからといって信用できるわけでもない。「非営利」とは、出資した人たちに利益を返さないというだけで、その人件費などは稼ぐ必要があるからだ。

 天然住宅の場合は、正直言ってスタッフに恵まれたと思う。スタッフがみんな自分のことよりも建て主さんの喜んでくれる姿のために働いていてくれる。このスタッフたちがもし利己的で冷たい人たちだったら、こんな運営はできなかっただろう。ということは将来のスタッフもそういう人たちでなければできないだろう。だからあくまで「現時点」だが、天然住宅は客観的で冷静な判断ができると思う。

 そんな「住宅教育」を実現したいと思う。「教育」なんておこがましい。「住宅リテラシー」でいい。ちょっと重たいけれど、このコラムで少し書いてみたいかと思っている。
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