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第50回 ホタル族、ホタルに会う

ホタル族、ホタルに会う

 白状したくないがぼくは喫煙者だ。中学生時代から喫煙者で、おカネが大変だから当時から節煙家だった。一日に吸う本数も7本もない。匂いがしないと言われることがあるが、匂うほどの本数を吸っていないのだ。吸った直後ならもちろんヤニ臭い。環境問題をしているから「…のくせに」と言われることもある。でも環境問題よりはるか前からしていたのだ。残念ながら習慣と化している。

 もちろん室内で吸うことはなく、ウッドデッキや玄関先で吸っている。こういう存在を「ホタル族」という。断続的に光るところから命名されたらしい。

 ある夜、ぼくがウッドデッキに出て「ホタル族」をしていると、庭先に緑の光がゆらゆらしている。これはと思って駆け寄ってみると、ホンモノのホタルだ。しかしなぜかこいつは点滅しない。スイッチが壊れたみたいにずっと光っている。ホタルは断続的に光るから捕まえにくいのだが、このホタルはそのままだから手で採ってみた。
蛍

 弱っていたのかどうか、指先に乗せると淡い緑の光を放ちながらじっとしている。近くに小さな水路があり、そこには時期になればたくさんのホタルが出る。その先の川にもホタルが飛ぶ。雨の後なら、自宅の裏の茂みからもホタルが飛ぶ。だれかのなくした命が彷徨っているようでもある。それは「怖い」というよりは「いとおしい」感じがする。

虫の命

 天然住宅仕様は有害化学物質を使っていないから、どうも虫たちにとっても居心地が良いようだ。だけど家主としては、そこは分をわきまえてもらい、人間の空間に立ち入ったり、人間の食事の邪魔をしたりしてほしくない。

 子どもはその小さな光を見て「怖い」と言っていた。そうなのかもしれない。虫の命は死と共にある。わずかな時間を過ごせば土に還っていく。虫は個別に確かに生きているのだが、巣全体でひとつの命であるようでもある。不思議なホタルの命を見せてもらった後、そっと庭の葉に戻した。明るくなれば、もう探すことはできなくなる。その命もまた他の命が受け取っていくのだろう。

 家の木も同じだ。かつて生きていた木のおかげでこうして住まうことができる。生き死にの問題ではなく存在を大切にしたい。木材は木にとっての第二の生なのだ。大事に使うことも命を粗末にしないことなのだと思う。
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