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第82回 ネオニコチノイド農薬ふたたび

ネオニコチノイド農薬

 ぼくは「ネオニコチノイド系農薬」の農薬を使うことに反対している。ネオニコチノイド農薬とは「新しい(ネオ)」「ニコチン系の物質」と結びつけたもので、殺虫性能が高いがヒトには影響が少ないとして、神経毒性が問題とされた「有機リン系農薬」に代わる形で1990年頃から急速に使われ始めた殺虫剤農薬だ。ところが残念ながらヒトに影響しないというのは誤りだったようで、ヒトの脳やリンパ腺への悪影響が認められ始めた。

 これは神経伝達系である「ニコチン性アセチルコリン受容体」に作用し、シナプスをオンのままにしてしまうことで虫を狂わせて殺していた。それが高度に社会的な暮らし方をするミツバチには悪影響があるとして、使用の注意書きにも書かれているのだが、それが世界中のミツバチの暮らしに影響して、飛んだら最後、巣に帰ることができなくさせてミツバチの巣の崩壊症候群(CCD)を起こさせていた。

子供たちへの影響

 ところがその害は人体にも同じ「ニコチン性アセチルコリン受容体」があるために作用した。岩波新書で「脳を守ろう」などの著書がある黒田洋一郎氏の調査によると、図のように人間にも作用する可能性がある。

 その実際の被害をレポートした報告もある。長野県千曲市の小学校で起こっている事態が「松本の松枯れを考える住民の会」のFBページに紹介されている。数値で述べると27人の小学校の学年の中で、1人は長期入退院、1 0人が授業中に外へ出てしまったりするADHD(注意欠如・多動性障害)状態、7人は教室にはいられるものの勉強が追いつかない状態で、通常通り授業を受けられる子が八人しかいないという手記の内容だった。学校には補助教員もいるが間に合わず、校長・教頭もマンツーマンでケアに駆り出されていた。8人の通常通りの授業が受けられる子たちが、授業に追いつけない7人の面倒を見ながら授業を受けている状態だというのだ。

 この話はぼく自身が聞いた同じ長野県内の小学校の状態とそっくりだった。

ネオニコチノイドの規制

 ネオニコチノイド系農薬はヨーロッパ、アメリカで禁止されつつあるのに対し、日本では規制緩和が続いている。この農薬が家の木材の防カビ剤としても、防虫シロアリ防除用にも使われているし、家具はもちろんペットのノミ取りやコバエ取り、殺虫剤に使われている。

 『ミツバチが疾走している時代は良かった』と言わなければならない時代が来るかもしれない。放置され続ける日本では、子どもが壊されつつあるように思えるからだ。
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