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第3回 天然住宅は高い?

ときどき言われるのが「天然住宅が良いのはわかったけど、値段が高すぎて…」という話だ。うーむ、カネのことでいつも悩まされる自分としても他人ごとではない。「高い」と言われれば『そうだよなぁ、つらいよなぁ』と共感する。それなのにどうやって天然住宅を建てることにしたのか。まずは小さな家であることだ。よく使われる坪単価から考えたら、小さな家であれば総額を抑えられる。もうひとつが「家の適正価格とは何か」ということだ。ぼくの小さな家でも、なんのかんので坪単価は約80万円になった。しかし以前、天然住宅仕様の家を他で見積もりしてもらったことがある。坪単価は約120万円だった。それと比べると三分の二まで抑えているのだ。
天然住宅のコストを安くしようと一生懸命頑張っているのだが、どうしても下げられない単価がある。それが木材の単価だ。まず天然住宅は普通の建売と比べると、木材を使う量が倍以上多い。別にムダに使っているわけじゃない。きちんと頑丈に300年もたせることを考えるとそうなるのだ。我が家はさらに簡易版の「板倉づくり」だ。板倉づくりというのは柱を立て、その真ん中に溝を掘り、その溝に厚さ三センチの板を上から下へと落としていって壁にする建て方だ。おかげで他の建売住宅の三倍の木材を使う。おかげで頑丈だし、木の調湿効果、断熱効果で心地良い家になる。  

なぜ木材の単価を抑えられないか。それには他社の木材費を説明しなければならない。ある会社の家は無垢材を使っていて安全でエコだと書いていて、それでいて価格が天然住宅より安い。なぜだろうと思っていたら、木材会社に聞いたらその理由がわかった。ものすごく買い叩くのだ。普通の家の木材費は刻みを含めても100万円程度なのに、我が家の場合は500万円する。普通なら「安い方がいい」と思ってしまうところだが、今の日本の森の状態を知っていたら、とてもそういう気にはならない。山は手入れするコストがなくて荒れ果てたまま、再度の植林はおろか山から林地残材と呼ばれる滓を降ろしてくる余裕もない。それでいてキコリの労災はワースト一位、給与は乏しく仕事はハードだ。これを買い叩くのは、時代劇なら『お前たち、それでも人間か』というところだろう。  

他の素材にしても買い叩くことはしたくない。この思いが経営を厳しくするのだが、でも「エコ住宅」と言いながら山を壊すような会社だったらない方がいい。
一方でくりこま木材の大場さんたちと一緒に、山のコストを下げながらさらに良い木材を提供する試みを続けている。大場さんが「優さんが連れてきた牛です」と紹介するところの牛たちは、食べてもらうことでコストのかかる下草刈りをしてもらうためにいる。ぼくがドナドナみたいに連れてきたわけではないが、手配はしたし牛の放牧をしたいと思っていたのも事実だ。でもその話をされるたびに、ぼくの頭の中には『牛の手綱を引いた田中優』の姿が浮かぶのだ。おかげで下草刈りのコストは五分の一になり、牛の落し物のおかげで苗木はよく育つ。  
もうひとつ、大場さんのところでは、伐ってきた木材を「防カビ剤のプール」に漬けない。というか、防カビ剤のプールそのものがない。知られていないが通常の木材はカビがクレームになるために、最初に防カビ剤に漬けてしまうのだ。「無垢材」とは呼ばれていても、実際には防カビ剤漬けだ。くりこま木材では防カビ剤を使わない代わりに「くんえん乾燥」する。木材を煙で燻すことでカビを生えにくくさせる。まるでスモークサーモンみたいに(食べられません、念のため)。  

その木材を大工の手刻みで「仕口・継ぎ手」を掘っていく。木を組んで建てるためだ。木は組んで使えば長持ちするが、金属で固めると「割れる、腐る」で長持ちしなくなる。しかも機械では組む木材の「のりしろ」の長さがせいぜい3センチ程度だが、手刻みでは10センチ以上もある。木材同士が一体化して、おかげで強いのだ。  

確かにおカネを出すのはつらい。どうしても無理なこともある。でも可能になる条件を考えることで解決したいのだ。誰かのものを買い叩けば、次には必ず自分のものが買い叩かれる。「どん底への競争」ではなく、互いに幸せになれる競争にしたいのだ。
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