HOME田中優の「住まいと森のコラム」 > 一般住宅の素材例

第129回 大切なのは素材の持つ力

スギのチカラ

天然住宅はスギをメインに建てているが、
それはスギという素材が優れているせいでもある。

揺れをしなやかに受け止め、曲がりに対する復元力がある。
冬には温かく、夏には涼しく、虫の嫌う成分を持ち、それでいて人体に害とする成分はない。

しかし、一般に流通しているスギにはその成分がない。
なぜなら120℃の高温で乾燥させる時点で中に持つ精油分が失われるからだ。
だから天然住宅で使う木材に高温乾燥で処理したものはない。

こうした性質は、木それぞれにある。
クリの木は生きているときには虫に食われることも多いのに、
伐採してからは虫に食われず水にも強い木になる。

ケヤキは時間がたつにつれて美しい風合いが生まれ、輝くような柱になる。
しかも強度も高く、水にも腐朽しにくい最高の構造材だ。

木の性質

このような木の持つ性質を役立てることが大切だ。

ところがこうした樹種によって異なる性質はかつての大工であれば詳しいが、
今の建築士はほとんど知らない。

建てるのが工業生産されたビルであれば良いが、木造住宅だと目もあてられない。
ケヤキの木の表面をベニヤで覆うこともあるし、
第一、家を建てるのに無垢の木は使わずベニヤ板とパーティルボードばかりで建ててしまう。

木には表と裏があり、表が上に来ていればトゲの刺さることもないが、
裏はトゲがささくれ立って手に刺さねことがある。
表というのがヨコから年輪を見たときに外側になる部分で、裏は立木の裏側になる部分だ。

ところが「無垢の木のマナイタ」として売っているものでも、木裏を表面にして売っているものも多い。
マナイタは適度な弾力と強度があり、食べ物に臭いを移さないものがいい。
ヒノキの板も固くて良いが、中でも適しているとされるのが銀杏の木で、ほんのり銀杏の匂いがする。

乾燥にも気遣いを

高温乾燥木材
高温乾燥木材
低温乾燥木材
低温乾燥木材
高温乾燥材の細胞
高温乾燥材の細胞
低温乾燥材の細胞
低温乾燥材の細胞
スギの木は木造建築に良いと思うのだが、木材の内側の色の濃い部分が乾きにくい。
生乾きの木を使うと、建ててから曲がり始めて収拾がつかなくなる。

本当なら自然乾燥に任せればいいのだが、それでは使えるまでに何年もかかってしまう。
早く乾かすために乾燥機が必要になるのだが、そのときの乾燥させる温度が問題だ。

木を強く組成しているのがリグニンセルロースだ。
鉄筋コンクリートでいうところの鉄筋の役割をしているのがセルロース、
セメントの役割をして固めているのがリグニンだ。

ところがリグニンは乾燥温度が高いと変成し始め、
乾燥温度が80℃を越えるとリグニンが壊れ
温度が高まるにつれて内部に細かな割れが出始める。
だから天然住宅では約60℃以下で乾燥させた木材を使っている。

この乾燥機は実験して効果のあったものをくりこま木材に導入したものだ。
まだ納得できるレベルに達していない。
乾燥具合に個体差があるし、その科学的な説明もできるようにしたい。
木の持つ性質を、もっと十分に使えるようになりたいのだ。
同じタグが付けられた田中優の「住まいと森のコラム」を見る