今、日本の森にとって、必要なことは「木を使うこと」
杉は日本の固有種です。古くから日本人にとって最も親しみ深く、その文化の様々な場面に用いられてきました。
第二次世界大戦後、拡大造林のときに、他の木材に比べ成長が早く、まっすぐ伸びるので、建材に使いやすいと全国各地で植林が行われました。その後、木材の価値が落ちてしまい、杉林は放置されるようになりました。その結果、今日、ほとんどの日本の森が、手のつけられていない荒れた森となってしまっているのです。
植林も大事ですが、森を守ることを考えたときに、まずすべきなのは「木を使う」ということです。
中でも杉を有効に利用することができれば、日本の林業を成り立たせることができます。
森の再生には、人の手を入れることが欠かせません。杉材をより多く、有効に使うことが、山紫水明の綺麗な景色を取り戻すために必要なことなのです。
私たちが杉材を多用している理由はそれだけではありません。
杉材が家を構成する材として、とても優れた性能をもっています。
杉の性能については、今まで天然住宅にて建てていただいた施主様の実感からも明らかです。
杉を住宅に使用することは、日本の森を守るだけではなく、建主様も守ってくれるのです。
杉の性能
(1)鎮静効果
木には、カビや細菌、害虫から身を守るための殺菌作用が備わっています。
これをフィトンチッドといいます。木は木材になっても(細胞を潰さない乾燥方法であれば)、忌避物質を出し、自衛しているのです。更に、フィトンチッドは人間にとっては森林浴のような効果をもたらします。殊に杉に関して言えば、心を和ませ、落ち着かせる鎮静効果があると言われています。
(2)保温性
杉のフローリングの上を歩くと、暖かく、そして柔らかく感じます。
それは、杉の繊維は空気を多く含む多孔質になっているからです。
空気を多く含むことができるおかげで、杉は保温性が高く、断熱性能においても優れた効果を発揮します。
窓のサッシをアルミから木製に変えた場合、熱伝導率が1/180になります。寒い日でも木製のサッシの表面は冷たくならないので、結露が生じにくくなります。
日光を取り入れたり、熱源をうまく利用すれば、杉のフローリングはいつまでも暖かい室内空気を保ってくれます。
(3)調湿性
空気層を多く含む杉材は、調湿性にも優れています。
10cm角の杉材で、一升瓶一本分の水分を含むことができます。
天然住宅の杉材は、施工から1年くらい経つと、木材の含水率が約15%(平衡含水率)になります。平衡含水率になり木材が安定すると、室内の湿度が高いときは吸湿し、乾いているときは放湿します。
そうして、春夏秋冬、快適な室内環境を保ってくれるのです。
(4)強度
意外に思われるかもしれませんが、同じ重さで鉄と木材を比べた場合、木材の強度が鉄よりもはるかに強いことがわかっています。杉は、圧縮では5倍、引っ張りでは4倍の強度があります。
また、地震の時にも自重が軽い木造の方がかかる振動エネルギーが少ないため有利に働きます。
また、法隆寺などの歴史的建造物などからもわかるように、伝統的な仕口や継手をつかい木材をつなげていれば、長持ちし、強度は日に日に増して行きます。