耐震等級
耐震性能を測る基準として、「耐震等級」が用いられます。これは、平成12年に品確法により制定され、耐震性について、建築主に目安となるように3段階に定められたものです。
等級は1、2、3があり、「等級1」は建築基準法で定める耐震基準と同じです。「数百年に一度発生する地震(東京では震度6強から震度7程度)の地震力に対して倒壊、崩壊等しない程度」とされています。「等級2」はその1.25倍、「等級3」はその1.5倍の耐震性能を意味します。
何が耐震性能の評価基準になっているかといえば、「等級1(=建築基準法)」に関しては、主に「耐力壁」の量です。
耐力壁というのは、例えば「筋交い」の入った壁です。柱と柱の間に斜めにかける部材につっかえ棒のような役目をさせて、地震や台風のときに生じる建物が倒れようとする力に抵抗します。この筋交いの入った壁に対し、部材の太さや筋交いのかけ方によって1.5~4.0という形で評価していきます。筋交い以外にも、2×4(ツーバイフォー)工法などで用いられている構造用合板を使用した耐力壁もあります。
耐力壁量の合計である「存在壁量」が、建築基準法で定める「必要壁量」(床面積と地震係数から算出)以上であれば、建築基準法に則った耐震性(耐震等級1)があるということになります。
等級2及び3では、それに加えより多くの耐力壁量が求められます。また、間取りにおける耐力壁のバランス、床倍率(床組の強さ)、接合部の仕口継手・金物の指定、横架材の寸法なども評価の対象となっていきます。
天然住宅では、少なくとも建築基準法の基準の1.25倍(等級2相当)以上の耐震性を確保しています。
耐震等級で測れない耐震性能へのこだわり
この壁倍率などの基準が耐震性能確保に大きな役割を果たしていることは確かです。
私たちはそれに加え、法律や等級で評価されない部分についてもこだわりをもって建築をしています。
例えば、柱と筋交いの接合部に使用する「筋交い金物」は、認定を受けているものであれば、法的な評価は同じです。
それなので、一般的には、安価な1枚鉄板をビス留めすることが多いのですが、天然住宅ではオリジナルの「AKコボット」を使用します。これは、ステンレス製で劣化しにくく、一体成型で土台と柱にボルトで接合するので、引き抜きにとても粘り強い力で抵抗します。ビス留めしないことで、木部の繊維を切らず、長期的な木材の劣化を軽減できます。
手刻みの木組みの構造では、昔ながらの技術を踏襲した仕口・継手で木材同士を組んでいます。
複雑な継手を使った接合部は、お互いを締め付け合い、1本の木のように強くなります。
また、木材同士では熱伝導率の差がないので、金物を必要としない接合部では、結露やサビはなく、劣化しにくいどころか、年々その強度を増していきます。
柱の太さも管柱4寸、通し柱4.5寸を確保しています。
また、住宅全体のプロポーションや間取りについても、耐力壁配置のバランスを考慮した提案をしています。
建築基準法では、新築時に「どれだけ剛性を持っているか(動かないか)」ということを評価しています。私たちは木のしなやかさを活かせるような柔軟な工法を採用しています。
また、法のチェックの網では経年的な「劣化」という点をとらえきれません。新築するからには、住み手は、長く、安心して暮らしたいわけですから、新築時の耐震性だけではなく、数年後、数十年後の耐震性をどう確保するかがポイントです。「頑丈」が「長持ち」する構造であるかどうかという視点で建築をしています。