こんにちは、スタッフの田中です。
先日、高尾を拠点に森づくりの活動を行う「森と踊る」を訪問しました。
団体を立ち上げた三木一弥さんと、同団体で「耕し人」として自然農の畑づくりに挑戦する赤塚丈彦さんに、森と製材所を案内していただきました。
高尾にあるこの森では「大地の再生」の活動や「土中環境」という著書などで実践されているような、土の中の環境を改善することで植生をより豊かにする考えや方法を取り入れた林業をおこなっています。山を再生するということを大切にする、新たな視点で捉え直したような林業です。
その方法はとてもユニークで、「普通」に考えるなら取らないであろうというような方法で行われているようにも見えます。でもそれは森の生態系に合った、あらゆる生命と共生する森づくりです。
森に造られている山道は、元々あった赤路(昔の道)を再生したものや、道のないところに三木さんたちが一から作った道です。もちろん大型のトラックが通れるようなものではなく、森への負担の少ない道です。
道づくりの時には水はけのための工夫がされています。道の脇に、炭や藁や小枝で自然の浸透マスのようなものを作ります。そうするとそこには菌が棲みつき、土の中に空気と水の通り道を作ってくれるそうです。水は道の上を流れてはけるのではなく、土に浸透していくので、道を壊さず、土砂崩れなどが起きにくい山になります。
また、山道を作る際に山側の斜面を90°につくっていました。そうすると土の中に空気が入るようになるそう。
土に空気があたると、土に穴ができてきて、菌が棲みつき、空気と水の道ができてくるのだそう。その証拠に、、平らな地面よりもたしかにこの90°の壁の方が明らかに植物が生えています。
土の中には目に見えている何倍もの水が流れています。土の中の水は下に流れるだけでなく、上にものぼることもあります。土の中を駆け巡り、環境を整えています。菌は土の中に棲みついて、菌同士のネットワークを構築し、植物を育て、木に栄養を与えています。
空気や水や風や根や葉、菌、鳥や虫、おそらく猪や猿にもそれぞれ役割があってうまく循環している。それが元々森の持つチカラ。
森はひとりでに、健気に、その仕事を遂行し続けている。どうやら森は、私たちが思いもよらないような複雑で、精密で、ダイナミックなシステムを有しているようです。
人の都合ではなく、森の生態系に寄り添う林業は、とても手間がかかるし、ゆっくりしかできないけれど、その分確実にその可能性を育てているように思えました。その証拠に、数年前の調査で30種であった植生が今は100種近くなっているそう。森を歩けば杉林の間にいろいろな種類の木や草が生きているのがわかります。
三木さんは、森の営みを知り、手助けするような林業をしています。「あくまで仮説だけど、、」と語る三木さんの言葉には、森に入り、その息遣いを感じ取りながら作業をし、その変化を見続けている確信を感じます。その目から見る森は確実に生きていて、尊く、愛おしい。
こんな山が増えたらいい。人が森とこんな風に関わることができたら、日本の風景は確実に変わる、そう思います。
一緒に行ったスタッフの感想も紹介します!
雨の中高尾の山を案内してもらったのですが、空気が澄んでいて清々しいほどでした。
山には針葉樹だけでは無く多様な植物が育っており、杉だらけの西多摩の山々とは少し表情が違いました。三木さんの植物や生き物の棲家である山を守る姿は、天然住宅の家造りへの姿勢を教えてくれた気がしました。(濱中)
持っている力を押さえつけるような人間の都合のいい方法ではいつか爆発してしまう。社会でも似ている事が起きている。土、岩、空気、風や日の光、生命体の本来持っている力を見つけて、その力を出し合いながら支えあう森づくり。いい所を見つけ育てていこう。三木さんの森の整備は子育てのようでした。(下岡)
人間が力づくでコントロールするのではなく、動物も植物も菌も、みんながなんとなくお互いに補い合って生きていけるように、そっとお手伝いをするような。
そんな林業なのかなと思った。
いや、林業にとどまらない。
みんなが気持ちよく生きていける場所をつくっている人たちだ。
案内してくれた三木さんと赤塚さんが、ずっとニコニコしていた。
雨が降る森の中はとても気持ちが良く、たくさんのエネルギーをいただいたような気がする。(小野寺)
代表の三木さんは、20年勤めた大企業を脱サラし、スコップ一本持って森に入り、手作業で道を作るところからはじめた、とてもエネルギッシュな方です。その後も自己流で間伐や土壌造りを行い、2016年に仲間と一緒に「森と踊る」を立ち上げました。
何かを悪者にするのではなく、自然界のあらゆる存在を受けとめ、その声を聴き、最大限の力を発揮できるように少しだけ手助けする。
そこには、自然が持っている可能性や再生する力を信じる気持ち、人と自然が共に分かち合いながら豊かになっていきたい、という希望を感じます。
ザーザー降りの森の中で、「話し始めると止まらなくなるんです」とにこにこと楽しそうに、三木さんはいろんな話をしてくれました。レインコートは役立たず、最後はびしょぬれになりながら、スタッフもすごく楽しそうだった。まだまだそこにいたい、三木さんの話を聞いていたい、そう思っていたんじゃないかなぁ(私はそう思っていました)。
「森と踊る」ってなんともユニークな名前ですよね。今度は私も一緒に踊ってみたいです。
「森と踊る」のウェブサイトも、ぜひ見てみてください。三木さんのメッセージとても素敵ですよ!(井上)
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