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【自給する暮らし】オフグリッドで自立した生き方をめざすには

オフグリッドという言葉を少しずつ耳にするようになりました。
私たちは、建主の皆様とともに10年以上にわたり、オフグリッドへの取り組みを続けています。
 
最近になり、やっと日の目を見そうな「オフグリッド」ですが、私たちは、その先見性を誇るわけでも、オフグリッドの定義を厳密にし独自性を強調するでもなく、そのハードルが下がったことを喜び、もっとみんながオフグリッドしやすくなるよう努力していくことが大切だと思っています。
 
まだオフグリッドに対して高いハードルを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、少しでもイメージできるよう、現在のオフグリッドの状況について前後編に分けてお伝えします。

オフグリッドとは何か


オフ=切断、グリッド=送電網。つまり、オフグリッドとは送電システムから独立し、電気を自給自足する生活のことを指します。家庭菜園のように自分で電力をまかなうという選択肢です。

なぜ、オフグリッドなのか


なぜ私たちはオフグリッドを推進しているのか?また、オフグリッド生活を選ぶご家庭があるのか?ということについて。
 

1)災害時の備え
オフグリッドが注目され始めたきっかけの一つが、東日本大震災です。被災地ではインフラの修復が進まず、長期間にわたり電気の供給が止まった地域がありました。また、首都圏でも計画停電が実施され、多くの人々が電力の重要性を再認識しました。この経験から、災害時にも通常の生活を維持できる電力自給への関心が高まり、オフグリッドを取り入れる方がちらほらと出てきました。
 
2)環境や社会問題
環境問題や人権問題を意識すると、オフグリッドは重要な選択肢になります。石炭や天然ガスの火力発電では化石燃料が使われ、日々たくさんのCO2を排出しながら電気を生み出しています。その燃料を減らすことは温暖化問題の対策にもつながります。
 
また、原子力発電所の事故では、放射能の問題により、社会に大きな分断が生まれました。大切な故郷を離れることになった人々もたくさんいます。このようなリスクを含む発電所がなくても済むように、代替案を模索することは私たちの責任なのかと思います。次の時代の発電方法として、再生可能エネルギーの利用が求められており、その延長線上にオフグリッドが位置しています。
 
3)経済的な理由
さらに今、これまで以上にオフグリッドが広がりつつある背景には、経済的な理由があります。世界情勢の影響で電気代が上昇し、その負担を軽減したいという企業や家庭のニーズが高まっています。加えて、オフグリッドを支える機器の普及が進み、価格も手頃になりつつあります。東京では助成金の制度が充実しており、それを活用することにより、約20年で初期投資が回収できるほどのメリットがあります。今こそ、オフグリッドに取り組む絶好の機会と言えるでしょう。

どうやってオフグリッドするのか?


オフグリッドを実現するには、まず再生可能エネルギーを使って発電し、その電力で家庭の電力消費を賄うことが基本です。再生可能エネルギーにはいくつかの種類がありますが、最も使いやすいのは太陽光パネルです。技術の進歩により、現在では畳一枚ほどの大きさのパネル2枚で、約1kWhの発電が可能です(10年前は同じ発電量を得るのに4枚必要でした)。都会の小さな屋根でも自給するのに十分な発電ができるようになりました。

オフグリッドの鍵を握る蓄電池


そして、オフグリッドの鍵を握るのは「蓄電池」です。家庭での電力自給で課題になるのは、発電のタイミングと使用のタイミングにズレがあることです。太陽光パネルの場合、電気は主に昼間に発電されますが、家庭の電力消費が多いのは朝と夜です。この「発電」と「使用」の時間差を解消するのが蓄電池なのです。昼に発電した電気を蓄電することができれば、朝と夜に自家発電した電気を使うことができるようになります。

蓄電池の価格の推移とリチウムイオンバッテリー


その蓄電池の価格もやっと落ち着き、手に届く位置に来てくれたかな、というのが今の状況です。
 
家庭用蓄電池として一般的なのはリチウムイオンバッテリーです。以前は非常に高価な代物でした。10年前にはオフグリッドのシステム全体で見積もると1000万円以上かかることもありました。それから、だんだんと価格が下がり、実績も積み重なり、今では安心して導入できる環境が整ってきました。

鉛バッテリーの課題とリチウムイオンバッテリーの優位性


当初、私たちは高価なリチウムイオンバッテリーの代わりに鉛バッテリーを使って蓄電するシステムを提案していました。鉛バッテリーは安価に大容量の蓄電が可能なので、家庭用蓄電池としては最適でした。
 
2012年当時、鉛バッテリーで25 kWhの蓄電容量を確保するために要する費用としては、バッテリーが65万円程度、全体のシステムで約250万円ほどで導入ができました。

ただ、鉛バッテリーは寿命が数年と短く、定期的なメンテナンス(蒸留水の補充と延命剤の添加)が必要で、メンテナンスの仕方や環境、電気の使い方によっては性能が落ちてしまうという課題がありました。実際、私の自宅ではフォークリフト用の鉛バッテリーを使用していましたが、最終的には劣化して交換することになりました。

 
また、鉛バッテリーは容量の半分以下で運用しないと寿命が短くなるため、実質使えるのは12.5kWh。これを、半分を切らないかと注視しながら生活するのも大変でしたし、天候によって年に数回は半分以下になってしまうこともありました。半分を切っても使用はできますが、バッテリーの性能が少しずつ落ちてしまいます。このように、鉛バッテリーには多くの制約がありましたが、当時は最もコストが抑えられる現実的なオフグリッドの方法でした。
 
リチウムイオンバッテリーを使う場合、こうした手間は要りません。また価格も鉛バッテリー並みとまではいきませんが、抑えられてきました。現在、リチウムイオンバッテリー導入にかかる費用は、約10 kWhの蓄電容量を導入する場合、価格の抑えられている製品で約300万円(設置費・税込み、パネル別)で設置可能です。また、東京では蓄電容量によりますが最大120万円の補助金が利用でき、経済的負担も軽減されています。

導入事例とコスト


太陽光パネルと蓄電池を組み合わせた具体的な導入例としては、7.4kWの太陽光パネルと9.8kWhの蓄電池のシステムで約480万円(税込み)で設置しています。東京では補助金を組み合わせて利用すると約230万円が戻ってきます。実質半額程度で導入できるため、ますます手に入れやすくなっています。

オフグリッドが選ばれる理由


このように、オフグリッドが経済的にも現実的な選択肢となり、導入する方が増えています。経済性だけを考えると、「太陽光パネルのみを設置して売電する」ほうが利益は大きいかもしれません。しかし、電気料金が今後さらに上昇する可能性を考えると、蓄電池を導入することのメリットも増してきています。

災害時の安心感と自立した生活


蓄電池を導入する大きなメリットは、災害時の安心感です。また、環境問題や社会問題への意識から、オフグリッドを選ぶ方も増えています。さらに、電気料金や政策の変動に左右されずに電力を得られるというのもよいところかと思います。そのように、自立する生き方を送れるということが一番のメリットなのかもしれません。
 
次回は、蓄電池の選び方と、オフグリッド生活に踏み出すための5つのステップを紹介します。
 
 

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