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【開催レポ】持続可能な林業を学ぶ。

こんにちは、田中竜二です。

先日、「オンライン家づくり学校」セミナーにて、天然住宅の木材を供給してくれている、宮城県の「くりこまくんえん」の大場さんにお話いただきました。

天然住宅の家づくりは、100%国産の「無垢材」を使用して家づくりをしています。その木材を供給してくれているのがくりこまくんえんです。

くりこまくんえんでは、木を「無垢材」として使うこと、生きた木材を扱うことにこだわっています。それなので、木材を合板として使うことや、薬品を使って防虫・防カビ処理すること、高温乾燥もしません。

大場さんのお話を聞いていると、木を大切に扱いたいという気持ちが伝わってきます。

今回、大場さんには「持続可能な林業」というテーマでお話いただきました。
セミナーの様子をダイジェストでお伝えします!

くりこまの特徴①「国産材にこだわる」


 
日本の森から、供給可能な木材の量は約52億㎥です!
多すぎてよくわかりませんね。でも、それくらい供給可能ということです。

そして、さらに年間6,800万㎥の木材が増加しています。
イメージしづらいと思いますが、その分、木の背が高くなり、外周が太くなり(年輪一層分)、木材として使える体積が増えているとお考え下さい。

では、国内で年間どれくらいの木材を「消費」しているかというと、8,150万㎥です。それでは、森がどんどん減ってしまうではないか!と思うかもしれませんが、少々お待ちください。

まず、上記データ取得時(2017年)の前年(2016年)は、木材供給可能量(増加量)が消費量を上回っておりました。それくらい拮抗しています。


そして、さらにその中でも国産材の割合は、2,966万㎥で、国内の消費量の約36%しか賄われておりません。国内の木材自給率は36%ということです。

建築材は国産・外国産合わせて、年間2,637㎥と消費量の中でも32%を占めていますが、国内産は、1,263㎥と全体の15%にとどまっています。

よく「木材は使わないほうがエコ、環境に配慮した行動」とされていますが、
国産材に限ってはそうではありません。建築に使用する木材を国産材に変えることで、増加する日本の木材を有効活用し、森を支えることにつながります。

くりこまの特徴②「木材のカスケード利用~木は端から端まで使う~」


一本の木から建築材として使える体積は何パーセントくらいだと思いますか?

太い柱や梁として使っても、約30%です。
丸太から四角い材をとりますので、70%の体積分は残ります。

それを捨ててしまうのはもったいないので、木材をできるだけ有効に使うようにしています。
 

 
建築材を取った後は、家具材として使われます。
くりこまでつくる家具「KURIKOMA」などになります。
 
また、家具材の端材でセブンイレブンの募金箱や、箸などを作っています。
 
その残りを、薪やペレットなどの木質燃料に使用し、その残りをチップにして、紙の原材料やバイオマス燃料として、出荷しています。
今後さらに枝葉の利用についても進めているところです。
このように木材を無駄なく利用する仕組みをつくり、経済性を担保しています。
 

くりこまの特徴③「天然更新する森を目指す」


 
くりこまの森では、皆伐する林業は行いません。
間伐、択伐でつくる森づくりをしています。

今ある生態系を維持し、さらに杉やヒノキだけでなく、広葉樹も育つような針広混交林を目指しています。

皆伐をしなくてもよい森をつくると、大規模な機械を山に入れなくても済みます。そうなると山の道も細くてよいので、山への負担は少なくなります。
また、除草剤ももちろんまきません。

大型トラックの代わりに馬を走らせ、薬品の代わりに牛を放つ、オルタナティブで持続可能な林業をしています。

くりこまの間伐された明るい森では、下草が生え、豊かな植生の森が育ちつつあります。
 

くりこまの特徴④「思いのある家づくり」


 
天然住宅では、建主様に森に行って自分の家に使う木材を伐採してもらうことがあります。

そうすることで、家に愛着を持ってもらい、より長く住んでいただき、できれば次世代まで住み継いでいただきたいと考えています。

また、建て主様には山の方々と顔の見える関係を築いていただき、安心して家づくりをしてもらいたいと考えています。

実際に森を見てもらって製材所を見てもらえばわかると思いますが、くりこまで行われていることは、いわゆる「主流」のやり方ではなく、手間がかかることばかりです。
でも、森を守ること、そして何より、建て主様にとって安全で健康な木材を出したいという「思い」を感じていただけると思います。
 

ご質問について


参加者の皆様からたくさんの質問、ご感想をいただきました。
ぜひ知っていただきたい内容のものがいくつかありましたので、セミナー終了後、大場さんに一部答えていただきました。

「外材が輸入コストに関わらず安価な理由と、今後国産材の価値(国内需要)を高めるためにどういった取り組みができるか教えてください。」

→(以下:大場さん)現在の市場では外材が安いということはないです。杉材は外材よりも高くなってしまいました。

「量が揃う」のと「品質が一定」なことが、外材が使われる理由になりつつあります。また、プレカット工場が大量に買って流通させていることも外材がたくさん使われている理由です(もともと外材が安価だった時の商習慣がそのまま残っています)。

外材の輸入コストは、距離があるにも関わらず大変安いです。日本国内の流通経費の方が、海外に比べ、大変高いです。

私が考える住宅市場における国産材需要の拡大は、住まい手が家を物として考えるのではなく、自分たちを守る暮らしの場だと意識を変えていくことが必要だと思います。

家は買うものではなく、自分たちの暮らしを作り、生活を守る場。意識を変えただけで自ずと変わっていくのではと思っています。天然住宅の役割は重要ですね。

「森にとって、手付かずにするのがいいのか、木を活用した方がいいのか?」

→(以下:大場さん)原生林(天然林)は手つかずでいいと思います。そういう森も必要です。

なんとかしなければならないのは人工林、里山です。人工林は人が森を畑にしてしまった森です。手を入れないと荒れる一方です。

また、里山は人が共存してきた森です。自然と人は共生のなかでいきていかなければいけないと思います。そのためには手を入れて守る必要があります。

後はその方法論だけだと思います。皆伐して(ぜんぶ伐って)植林するのか?
少しずつ切って森を残しつつ、100年、200年の森を作るのかなのだと思います。私達が森と関わらずに暮らすことは出来ないので、これからどう関わって未来へ残していくかだと思います。

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今回のオンラインセミナーに、60名以上の方にご参加いただきました。

思えば、栗駒はなかなか遠くて、車で6時間くらいかかります。
現地を見に行くことも大変ですし、大場さんのお話を聞ける機会も多くはありませんでした。オンラインであれば、それをクリアしていけますし、気軽にご参加いただけます。

ぜひ、今後も大場さんのお話を聞ける機会を作っていきたいと思います。
そして、できれば、現地を見ていただける機会も作っていければと考えております。コロナが落ち着いたころ、栗駒でのイベントを企画したいと思います。
 

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