先月、先々月と猛暑の中、上棟式を3度執り行いました。
コロナ禍ということで、実施するかどうか、またどのように実施するか検討しましたが、いずれも長居せず、簡易的な形で行うことになりました。
いずれも開催できたのは、建主の皆様のご要望があったからこそ。
現場や職人を大切に思ってくれている気持ちが伝わり、うれしく思いました。
中には、くりこまに木材を伐採しに行ってくれた建主様もいらっしゃいます。
組み上げた構造とその一部になっている伐採木材を確認してもらいました。
森で丸太だった木材が製材、乾燥、加工されて家の一部になっているのは感慨深いものがあるのではないでしょうか?
木材が運び込まれて、上棟するまでは意外とすぐです。
2~3日で家の輪郭が現れます。ここからの工事に時間がかかるのですが。
組み上げたばかりの構造に囲まれ、半分外部ですが、その屋根の下で執り行う上棟式は大切な機会だと考えています。
今、家づくりに際して、上棟式をすること自体珍しいことだと思います。
上棟は家づくりにおいて一つの区切りです。
上棟式は、大工の刻みが完了し、無事組み上げることが出来たことを労う場です。
そのやり方は地域によっても様々です。
私たちは設計事務所として地域工務店と建築をすることもあるので、工務店によって考え方の違いを感じることもあります。
建主様が1日職人の食べ物や飲み物の世話をするところもあれば、餅まきをしたり、棟梁が「きやり」という唄を歌うこともあります。
男性だけ二階に上がって祈願するということもありました。(なんだか誰かに怒られそうなシキタリですが)
最近は大工による刻みは省略されることもあるし、工期を早めることを求められて、上棟式をしないことも多いと思います。
時代によってその必要性が変遷するのは仕方ないことなのかもしれません。
ただ、建売ではなく、注文住宅を建てるのであれば、上棟式をやってみることは意味のあることだと考えています。
もちろん建主様は、それぞれの思いをもって催してくれていると思いますが、
私たちは、上棟式を「顔合わせの場」としてちょうどよい「場」と「タイミング」だと考えて、おすすめしています。
建主様にとっては、職人の顔が見れて安心できると思いますし、その後、工事現場に顔を出しやすくなります。
職人にとっては、建主様の顔がわかること、家族構成が分かり、キャラクターがわかることは、細部への気遣いや責任感、何より「この人(家族)に喜んでもらえる」というやりがいにつながります。
完成した建物の何が変わるというわけではありません。
でも、やはり思いを持って仕事をすることを大切にしたいし、その思いが家のどこかに宿ると思うのです。
ある大工は、「丁寧につくった家はわからないけどなんか違うんだ」と語っていました。「大したことない構造なのに耐える力があったりする」と話していたのを思い出します。
形は上棟式でなくてもいいと思います。
顔と顔を見合わせる機会があり、お互いに思いを共有して家づくりをしていく確認ができればいいと思います。
とはいえ、上棟式をやってみると、昔から連綿と続いてきたことには意味があるのだなと、わかる気がします。
上棟式の後は、直会(なおらい)をすることもあります。
棟上げした屋根の下で、職人を労い、お食事をしたり、昔なら宴会をすることもあったようですが、最近は職人も車で来ているので、お酒は持ち帰りで、アルコールフリーのビールやお茶で乾杯することも多いです。
真夏や真冬は長居が難しいので簡易にしたりします。
コロナ禍では、そこに留まっての長時間のお食事は「濃厚接触」にあたるそうなので、先日の上棟式も式と顔合わせだけにしました。
顔と名前を覚えてもらい、少しお話しできれば、その後の現場でも話しやすくなります。今どの現場も工事が進行していますが、建主様が通勤途中に現場に寄って声をかけてくれたり、差し入れを持ってきてくれることもあります。そのようなやりとりがきっと良い家づくりにつながるし、愛着につながるのではないかと思います。注文住宅でないと、この時間はありません。
建物の中も安全な建材しか使っていないので、安心して、現場に足を運んでもらえればと思います。木のいい匂いがしています。
上棟式のタグがついたその他の記事は >>こちら
こちらもおすすめ! >>「伐採体験のススメ」