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本当に「高気密、高断熱」がいいのか(下)|田中優コラム #203

 
>>前話の続き
 これを考えたきっかけは、偶然にも奥さんに勧められて購入した洗濯乾燥機のおかげだった。それは電気を自給しているために節電型の洗濯乾燥機を選んだことに始まる。昨年に一度、井戸の水を汲み上げすぎて足りなくなり、再度井戸に水が貯まるまで一日間洗濯ができないという事態に遭って、節水型の洗濯機がほしいと思っていたのだった。
 
 そこで高くてもいいから節水型で、電気も省エネで、乾燥機までついている洗濯機兼乾燥機を探していたのだ。奥さんが見つけたものは腰が抜けるほど高かったが、確かに省エネで節水型になっていた。水の消費量は従来使っていた洗濯機の半分以下、それ以上に気に入ったのは乾燥機として動いている時の消費電力の驚くほどの少なさだった。
 

 
 我が家では電気に特にシビアで、大きな電気消費のものは使えないし、一日あたりの消費量が多いとその後の暮らしが大変になる。そこで我が家ではヘアドライヤーですら吟味してから買っている。遠赤外線を使うことにより、600ワットの電気消費で乾かす品だ。だから当然、洗濯乾燥機の乾燥エネルギーも吟味する。洗濯物の量から考えたら、どれほどの電気を消費するのか、不安に感じていた。
 
 ところがこの洗濯機兼乾燥機の乾燥時の電気消費は、なんとヘアドライヤーと同じ600ワットだった。これには理由がある。電気を電熱器に使ったら莫大に電気を消費するのだが、この乾燥機にはヒートポンプ機能が付いていて、電熱器ではなく周囲の熱をヒートポンプで集めて、その熱で乾かすのだ。ヒートポンプは「電気で熱を作る」ことの中で唯一許せる効率的な方法だ。しかも電熱器の稼働するタイミングは、最初の熱利用などの一部に限られている。
 

 ヒートポンプを使うということは、逆に内気から熱を奪って、冷却することもできるはずだ。その冷却効果は、乾燥させるときに出る水蒸気を水で冷やして、まるで結露する時のように水蒸気から水を排水できるのではないか。
 
 そう思っていたら、なんとこの洗濯機兼乾燥機では無排気で乾燥させるのだ。その名も「無排気乾燥」という。おかげで水蒸気が撒き散らされることもない。すると家庭内の発生源の38%も減らすことができるのだ。
 
 ちなみに我が家では奥さんが湿気を嫌うので調理中や風呂の蓋を開けている間は換気扇を回す。加えて我が家のペレットストーブは室内の空気を使わず、FF式になっているのでその水蒸気もない。その結果、我が家の室内の水蒸気は一般家庭の53%程度、つまり半分に減らしているのだ。
 

 水蒸気がここまで減れば、カビや腐朽菌発生による木材の腐りも防げると思う。外気からはもちろん水蒸気は入ってくる。高気密ではないのだから、今以上には防げない。それに加えて家庭の室内から水蒸気を発生させていることが問題だったのではないか。室内では暖房すればもちろん窓に結露する。しかし我が家の窓はLow-Eのペアガラスで、もともと結露の可能性は少ない。加えて去年、断熱内窓を建具屋さんに作ってもらったので、結露はほぼない。「高気密・高断熱」という呪縛は、実は室内に排気する水蒸気の問題だったのではないか。嫌うべきは室内で発生する水蒸気であって、外の空気ではなかったのではないか。
 
 水蒸気排出のない暮らしであれば、むしろ適度な通気性があった方がいいと思う。むしろ断熱材の素材を健康的なものに、石油製品でないものにと考えた方がずっと有益だろう。我が家はこの洗濯乾燥機のおかげで救われた気がする。
 

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