こんにちは、代表の田中竜二です。
好評だった第1弾のQ&Aブログ。しばらくの期間が開いてしまいましたが、前回に引き続き、「木を伐って家を建てることは環境破壊にはならないの?」という質問にお答えしていきたいと思います。
Part1をご覧になっていない方はこちらから読むことができます。
皆さんの中には、家づくりを誰に(どの会社に)任せたらよいか、たくさんの会社があるからこそ迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
決め手はひとつだけに限りませんが、「その会社の価値観に共感できるか」は、家づくりのパートナーを選ぶうえで大切な指標のひとつだと思います。
世の中には数多くの住宅会社があり、それぞれにミッションやビジョン、大切にしている思いや価値観があります。一方で、家を建てる方にもそれぞれの価値観や大切な思いがあるはずです。
家づくりは人生における大きなプロジェクトです。だからこそ、こうした価値観や思いを大切にしながらパートナーを選んでいただければと思います。
この読みものでは、お客様からの「よくある質問」をもとに、私たちが家づくりで大切にしていることをお伝えします。
天然住宅についてより深く知っていただいたり、私たちの価値観と共感できるかのすり合わせをしていただいたり、家づくりを考える上でのコンセプトづくりのきっかけになれば嬉しいです!
前回は、環境破壊にならない家づくりとして、「国産材の使用」「持続可能な林業者の応援」という観点でお話をしました。
今回は、もうひとつ大切なこと、「合板ではなく無垢材を使う」ということについて話したいと思います。
「『無垢』で使う」とはどういうことか?
大量生産・大量消費が叶う「合板と集成材」
現代の建築において、さまざまな用途で大量に使われているのが合板や集成材です。合板・集成材とは、木材を細かく切ったり、スライスしたものを貼り合わせて作られる木製品のことです。これにより、建築に適した大きさや形に加工され、施工性が高くなります。
一方で、無垢の木材はそれぞれに個性があり、反ったり、曲がったり、割れたりすることがあります。これらは施工の際に、扱いが難しくなる要因となります。
それらを扱いやすいように一定の品質にすることができるのが合板・集成材です。
そうすることで効率を上げることができます。木材の持つ特性を抑えることで、樹種や樹の曲がり、長さといった性質を問わずに利用できるようになります。
木材の良し悪しに左右されないため、大量生産・大量消費の流れにのせることができるのです。
合板・集成材が主流になると起こること
工務店は、合板・集成材をとても安価に手に入れることができます。
しかも、合板のような木製品は、市場にわたるまでの間にたくさんの仲介業者が介在し、そのたびに中間マージンが発生します。
ということは裏返せば、山側に戻る金額というのは、少額にならざるを得ないということです。
そうなると、山側では自立できず、補助金を頼みにした林業をせざるを得ません。
つまり、皆伐する林業をすることになります(「皆伐する林業」をすることで国から補助金をもらうことができるのです。詳しくはPart1参照)。イメージ通りの丸裸の林業です。それは効率がよく、たくさん木材を市場に出すことができます。
ところが市場に一度に大量の木材が流れると供給過多になり、木材自体の価格は下がり、経営は苦しくなります。もっとたくさんの木材を求め、また山が裸になっていく。手をかけても儲からないので山が捨てられていく、、という負の循環に入っていきます。
合板は便利。しかし副作用もある
建築で合板を使うと便利です。安くつくることもできます。建築基準法は合板を前提にしていると思える部分がたくさんありますので、計算上の数値は高く、優遇も取得しやすい。かくして合板は建築に欠かせないものになりました。しかしそこには副作用もあります。
それは、調湿性や長期耐久性がないこと、また、化学物質の問題です。合板は調湿性がないので壁内結露のリスクがあります。また、合板は木材をボンドで接着したものです。防虫・防腐処理も施されています。そのような木工用ボンドや薬品から揮発する化学物質はシックハウスの原因にもなります。そのような観点からも私たちは合板を極力使わないようにしています。
山に正当な対価を還元するためには
何も知らずに建築をすれば、自ずと合板を多用する家になります。そうなった場合、家づくりは「森を壊す」ものになってしまいます。
合板は建築する際に使用するととても安くあがります。
例えば、建売一棟建てて、山に戻る木材費は、80万円くらいです。その金額では山側で自立した林業を営むことは難しくなります。
山に対して正当な対価を還元し、家づくりを「森を守れる」ものにするためのポイントは、「合板ではなく無垢で使う」ということです。
私たちは、日常生活の中で様々な「モノ」を選択し、購入します。
何かを選択し、購入する際、無垢のものを使うことで、山側に還せる金額も多くなるのです。
その例として挙げられるものは、
① 家具(合板・集成材ではなく無垢の家具)
② 家(合板・集成材ではなく無垢の家)
③ 木質燃料(薪やペレット)
④ 紙パルプ(紙を作るためのもとになる繊維)
例えば、天然住宅で家を建てると、約400万円~800万円を山に戻すことができます。
それだけ、還元することができるならば、山は自立して林業を営むことができるようになるのです。
私たちにできること
私たちが、環境や森を守りたいと思うときに、直接山仕事に関わらなくても街側でできることがあります。
それは、無垢の、できれば顔の見えるような産地の製品を選ぶということです。
価格は少し高いかもしれません。でも、愛着をもって使えば、それがあるだけで、暮らしが楽しくなるのではないでしょうか。
プラスチックの弁当箱ではなく、曲げわっぱにしてみる。国産の無垢のおもちゃを選んでみる。そんな身近なことから始めてみるのもよいと思います。
次の買い替えの時に家具を無垢のものにすることを検討してもよいし、もしできたら暖房をペレットストーブにすることができたら、電気や石油をエネルギー源とするよりも持続可能です。
山側の課題は常に「出口」です。ほとんどの産地での課題は市場とつながっていないことなのです。街側に需要がなければ、無垢の家具や建材を出すことはできません。既存の大量生産大量消費の流れに乗るしかありません。私たち市場側でできることは、実はたくさんあるし、それがまさに解決策なのです。
手に取る製品を無垢にシフトすること、それが環境を守ることにつながるのです。
次回は「長く住む」という視点から、環境破壊にならない家づくりについて考えてみたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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