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コロナ対策を考える③|田中優コラム #149

印鑰智哉さん


ぼくにはもう一人、欠かせない友人がいる。印鑰智哉さん、「いんやくともや」さんと読む。その彼は今や食と農に関する第一人者となっているが、そんなことよりとても親切で信頼できる人だ。
 
ぼくが彼と知り合ったのは、1992年のブラジル会議に出掛けた時に、ブラジルで通訳をしてくれた人だった。とんでもなく親切で、何でも疑問に答えてくれたし、背景まで含めて詳しく伝えてくれる人だった。その彼と日本で再会した時、本当に幸せな気持ちになった。
 
でもそれだけではなかった。彼は次々と新たな情報を伝えてくれて、新しい書籍と出会う機会ももたらしてくれたからだ。そのひとつ、彼が読んでいたのが「あなたの体は九割が細菌」というものだった。その彼は今、フェイスブックで書いている。長いのだが、短くして紹介しよう。

 

Web of life


Web of lifeという言葉がある。生き物たちはお互いにつながっていてそのつながりがあるから生きていくことができる。そのつながりが私たちやこの地球に持つ意味をあらためて考える必要がある。
 
かつて、生物はどんどん進化していくけれども、その生物自身が自分の遺伝子を変えていくから進化していくと考えられてきた。

 
でもたとえばラウンドアップを大量に撒いて数年で耐性雑草が生まれてしまう。なぜ、そんなに早く遺伝子が変わるのか?実際に雑草の遺伝子がそんなスピードで変わることはできない。実は雑草が耐性を獲得したのは自分の遺伝子を変えたからではなく、耐性を持つ微生物を取り込んだからだった。細菌は1000倍、さらにウイルスは細菌の1000倍、早く変わっていくことができるという。

 
細菌を取り込むことで雑草たちは生き残る能力を獲得することになったと考えられる。植物や動物、私たち人類のような大きな生命が誕生したのは細胞の中にミトコンドリアがあって大きなエネルギーを作れるようになったからだが、そのミトコンドリアも元は独立した細菌だった。

 
そして私たちの遺伝子の4割近くはウイルスの影響を受けているという。つまり、そうした微生物を取り込みながら私たちは変化を遂げてきたことになる。自分たちが自分たちの力で進化していくという以上に、さまざまな(特に微生物の)力をもらいながら新しい能力を獲得してきた、というのが真相のようだ。

 
編み目のように存在する生命、Web of lifeこそが進化の原動力であり、個々の生命を切り離せば、無力となってしまう。化学肥料と農薬による農業はこのWeb of lifeを否定し、その力を化学物質で代替させようというものだ。この農業がまさに抗生物質耐性菌やさまざまな病気の原因を作り出していることもこの根本的な問題に起因している。

 
今、ウイルス以外にも世界で抗生物質耐性菌の出現など対応不可能な病原体が増えている状況は深刻である。Web of lifeが絶滅に向かいつつある。そうした動きは止める以外ありえない。(中略)

 

今、私たちがやらなければならないことは、この新型コロナウイルスとの敵対的プロセスが続く間、感染による犠牲を出さないために、免疫弱者、そして社会的混乱から生み出される社会的弱者を守り切る、ということにつきると思う。
 
今回のウイルスであれば免疫の強い人であれば感染してもワクチンの開発の前に免疫を獲得していけるだろう。でも、免疫の弱い人にとってはこれは命取りになってしまいかねない。空間と時間が確保できれば、免疫の弱い人も安全に守れるだろう。

 
だから、免疫弱者、社会的弱者への対応こそが最大の関心事にしてほしいのだけれども、政府の姿勢にはその配慮がまったく感じられない。新自由主義がまさに犠牲にしてきた部分だけに、政策変更には抵抗するだろう。さらに特別措置法で緊急事態宣言ができるようになってしまえば、政策維持が強化されてしまう。

 
新自由主義とはWeb of lifeの相互依存、生命の多様さを否定し、特定のものたちだけが利益を独占しようという政治方向なのであるから、この対立は根源的なものにならざるをえないだろう。

 
命が守れない新自由主義ということで、人類は新自由主義から脱しなければ生き残れない。ここからすべてが変わっていくだろう。

 
今後、今回以上にさらに強力なウイルスや病原菌に備える必要もある。まずは身近な免疫弱者、社会的弱者を守ることから始め、根本的な政策変更を求める力を強めていくこと、すべての分野での政治を根本から変えていくことだと思う。

 


 

全く同感だ。「食べる庭」を作った時、植物の根の先にもっと膨大な細かな根があった。でも今気づいてみると、それは「糸状菌」という別な微生物だったのだ。
 

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