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無煙炭化器|田中優コラム #70

庭で炭づくり




岡山の家に戻ると庭に出たくて仕方ない。何かというと「炭作り」をするためだ。炭作りをするのに便利な「無煙炭化器」を買ったためだ。この炭というモノの魅力に憑りつかれてしまっている。といっても芸術的なものではなく、ほとんど焚火のようにして燃やしている。モキ製作所というマニアックなものを作っている会社で、炭の作れる簡易なものを売っていることを知り、また天然住宅に住んだ建て主さんでそれを自作した人もいて、ぜひ自分でもやってみたいと考えていた。幸い田舎だし庭も広い。しかも無煙となれば買わない手はないだろうと思った。

インターネットで購入して家に届いたのは大きな箱だった。開いてみると、なんと底が抜けた鉄板を丸めたもので、「えっ、これ?」という感じだった。ところが使ってみると炎の輻射熱を反射してどんどん燃える。炎が収まるころには空気の入らない下から順に炭になり、そのまま炭の集まりを庭に放置している。雨ざらしにして炭を中性にするのだ。

テラ・プレタ(黒い土)



もともと炭のすごさに感動していた。アマゾンの「テラ・プレタ(黒い土)」というものは、連作障害を起こさない土だ。それは2002年になってやっと人間の手によって作られたものであり、栄養のない赤い粘土層に低い温度で焼かれた炭と木酢液の混ぜられたものだとわかった。作られたのは4000年から6000年以上前からのものだと。するとそのテラプレタが土中のミネラル分を集めて保存し、数千年経った今も傷まない土を維持するのだと。

まだこれを、今の人間の科学技術は復元できていない。しかも木材の炭素分の8割を炭として保存し、フランス政府は地球温暖化対策の決定打として「炭素保存型農法」を提唱する。昨年末の「COP22」会議でのことだ。この対策を持っていたから、フランスは気候変動枠組み条約を取りまとめたのではないかと考えてしまうほどだ。何しろ現在の農業に、たった0.4%だけ余分に炭素を含ませるだけで、現在地球上で排出されている二酸化炭素の75%を吸収できてしまうというのだから。

友人の菌ちゃん農法を進めている吉田俊道さんも、今、テラプレタの実験を始めている。少なくとも作物を豊かにし、病害虫を防ぐ効果があるとなっては、やってみないわけにはいかないだろう。その話を伝えたぼくとしては、自分でもやってみたいわけだ。

注意事項



ものを燃やすのは楽しい。根源的なところで楽しみなのだ。幸い、昨年伐採した竹の束がいい具合に乾燥している。炭作りの失敗から学んだことを伝えよう。

1.燃やす材は同じ程度の太さを選ぶ。そうしないと炭ができた頃に細い材は「灰」になってしまう。
2.よく乾燥させた木材にするために、早めから伐っておこう。
3.家に届く段ボールは焚き付けになるのでとっておこう。
4.火付きが良いので前髪に注意しよう。
そう、炭焼きの後、ぼくの前髪は見事に天然パーマがかかっていた。
 

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