リフォームと病気の関係
「新唐人」というアメリカの中国人向けのテレビ局が、「中国の白血病患者児童の9割の住宅が高級リフォームされており、毎年210万人の子供が内装材料が原因で死亡している」とする内容を放映した。広州で昨年12月に開催された乳幼児の発育と室内環境に関するシンポジウムで、中国工程院院士で呼吸疾病専門家の鐘南山(しょうなんざん)氏が、「室内の空気が乳幼児の発育・成長、さらには疾病にまで影響を与える」と講演した。
鐘氏は中国環境保護協会の統計データをもとに、白血病を患う子どもの患者の90%の家庭で住宅高級リフォームを行っており、毎年210万人の子どもが内装材料汚染が原因で死亡していて、80%の内装材料で基準値を超えたホルムアルデヒドが使用されているとし、妊婦の流産の70%も環境汚染と関係があると指摘したそうだ。
中国の安全基準
この発言を「信用できない」とする専門家がいる一方で、「本当にその通りです。私が見たところによると、白血病患者の家はたいてい住宅リフォームを施しています」とする人もいる。「北京天則経済研究所国際部主任の王軍氏」は、「鐘南山は体制側の学者ですが、その発言は比較的正直です。科学者である以上、嘘は言えないでしょう。だから、彼の言っていることは比較的信頼できると思います。中国ではホルムアルデヒドの汚染問題が深刻ですから」と言われている。
北京在住環境保護ボランティアの張峻峰さんは、「あらゆる建築材料に含まれている科学溶剤がその原因です。リフォームの際に大量に使われる木材や合板、ペンキなどに含まれています。ペンキや接着剤に含まれるホルムアルデヒドやベンゼンはじめ多種の溶剤によって、木材を塗装し接着します。しかし、これらの216種類もの溶剤によって接着させられた場合、ホルムアルデヒドが完全になくなるまでに100年~200年の時間がかかり、ホルムアルデヒドの汚染問題を予防することは不可能である」という。唯一の方法は、こうした木材や塗料を使わないようにすることだが、「現時点では無理なことです。それが現実です」という。
中国には2000年頃から民間の建築物について、室内環境汚染を抑えるためのルールを定めて10種の有害物質を含む建築材料の使用量を制限している。しかし政府の安全基準値が低い上、家具などの環境基準値が低いことが原因だと専門家は指摘している。
ユニットリスク
いや、日本の安全基準も同様に低いのだから他人事ではない。それでもぼくはこの記事を読んだときに「大げさだ」と思った。しかし調べてみると「ユニットリスク」というものがあった。ユニットリスクとは「発がん性を有する物質を1μg/m3(マイクログラム)含む大気を生涯を通じて吸入し続けた場合のがんの発生確率の増加分を表すもの」で、空気1立法メートル中に1マイクログラムのホルムアルデヒドがあった場合、その空気を一生吸っていた場合のガンの発生確率は10万人に11人となる。
ところが日本には「室内のホルムアルデヒドの厚労省指針値」しかなく、「シックハウス対策」のみで、「発ガンリスク」ではない。しかもそのシックハウス基準は「100μg/立方メートル/0.08ppm」であって、発ガンリスクに直すと10万人当たり1100人となる。中国が日本と同じで、中国の人口を13億人とすると、ガン全体のユニットリスクは1100万人となってしまう。うち210万人が死亡するとしても不思議ではない。なんと驚くことに、この推定値は正当なのだ。
この結果、「ホルムアルデヒドの汚染問題を予防することは不可能」と話し、「唯一の方法は、こうした木材や塗料を使わないようにする」ことになるのだ。天然住宅であれば、天然由来のホルムアルデヒドしか発生させない。化学物質過敏症の人でも天然由来のホルムアルデヒドに反応しないことが多い。
今後のことを考えると天然住宅を選択することは理に適っていると思う。
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