たたら製鉄
シジミがたくさん採れることで有名な宍道湖は、島根県の北側に伸びる半島との間にある。でもこれは「たたら製鉄」のせいで、島が日本列島につながったためにできた地形だ。もともとは島根県沖にある島だった。その間にある海に川が土砂を運んだのだ。とてつもない量の土砂を排出したのがたたら製鉄だった。
鉄の原料として山を崩し、そこから「鉄穴流し(かんなながし)」という水の流れで比重によって砂鉄を選ぶ手法を用いて砂鉄を採取する。その比重の差で選択するために大量の水で土砂を川に流す。加えて砂鉄を溶かすために炭の熱で「たたら製鉄」をする。この一回の製鉄のために必要になる炭の量は、山一つを裸にしてしまうほどだった。
もののけ姫の物語
このたたら製鉄を年間に百回以上行うのだから、たたら場があるごとにそれだけの砂鉄を採って土砂を流し、炭になる木材のために山は伐られていた。それが中国山地に神々が宿るような深い森を失わせ、二次林のような浅い森にしてしまっていた。
宮崎駿の「もののけ姫」の舞台になったのは、この「たたら場」をめぐる戦いだった。森に棲んでいた「シシ神」は、たたら場によって壊されようとする森の主で、それに守ろうとする「もののけ姫」とたたら場を運営する「エボシ御前」との戦いになっていく。ただし創造の物語だから、たたらの形式が江戸時代以降の仕組みだったり、女人禁制が女たちの仕事だったりする。それでも面白い物語になっている。
歴史的な環境破壊
ぼくならやはり「シシ神」や「もののけ姫」の側を加勢するだろう。地形を変えてしまうほどの環境破壊があったのだ。イギリスの産業革命並みの。今の環境は次の時代からの借り物とも言えるのだから、きちんとした形で引き継ぎたい。
もう愚かな原子力もダム開発もいらない。後世の環境をダメにする行為は許せない。それで儲けた人にはそれだけの罰則を与えたい。そうでないと悪いことをし放題になり、それが儲かる社会になってしまう。すでにそうなっているかもしれないが。