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予防する家|田中優コラム #126

家に必要な水準




決して安くはない住宅を建築する会社として、何を大事にしているのか、繰り返しになっても、知らせることをしなければいけないと思う。

私たちの考える「必要な水準をもつ家」とは何なのか。もちろん空論になってしまうような理想的な水準などではなくて、納得できる入手可能な水準をもつ家だ。別にカネがあれば買える家ではない。デザインが奇抜な家でもない。ただ最低限必要なレベルを保てる家とは何なのか。その水準とはどこなのか。

まず第一に「有害化学物質」を使わず、化学物質過敏症も電磁波過敏症も招かない家だ。ところがこれだけのことがなかなかできない。

今の家の標準的なものが有害で揮発性のある接着材を多量に使った「ベニヤ板」で建てられているからだ。壁の内側にはベニヤ板が使われ、床下にも使われて囲まれている。

しかも建てている住宅の大事な部分には強度が高くなる集成材で固められた木材を使い、表面にはあたかも木材に見えるビニールシートが貼られている。

気づかずに罹患している?



こうしたフェイクボードとでも呼ぶべきものが多用されて、接着剤の接着効果が寿命を決めてしまうばかりか揮発してきた有害ガスによって住む人にも害を与える。

そうならない人も多いが、それによる害に気づかずにいるだけの人も多い。室内でくしゃみが止まらなかったり咳込んでいたり、頭痛に悩まされたり、自分で化学物質過敏症になっていることに気づかない人も多いのだ。

気の毒に思うが、化学物質過敏症になってしまってからの対策になる家を建てるのは難しい。カネが無尽蔵にある人ならその人が反応しない素材を探し出して、それだけを用いた家だって建てられる。

しかし通常はそれ以前にいろいろ試している中でカネを使い果たし、もはや選んでいられないところまで追い詰められている人が多いのだ。その人たちに大丈夫な素材を探すのは困難だ。

普通なら大丈夫なはずのスギにすら反応する人もいるのだ。反応しない素材を探し出すだけでも費用が掛かってしまう。

大切なのは「化学物質過敏症にならない」こと



一般的に安全とされる素材でも反応することがあるのだ。だから私たちは化学物質過敏症の人たち向けの住宅は建てている、とは言えない。化学物質過敏症にならないための住宅なのだ。なぜなら一度化学物質過敏症を発症すると、次々とそれまで大丈夫だったものにさえ反応するようになるからだ。

反応するものに限界はない。何に対してでも反応することがあるからだ。

特に匂いがきついものに反応することが多いが、一方で電磁波過敏症を併発してしまう人も多い。相手が電磁波では臭いもないし、測定するのも困難だ。反応している周波数が特定できているならまだ対策できるかもしれないが、電気のような低周波のものから携帯電話のような高周波なものまで、稀には耳に聞こえない低周波であることもある。

そうならないことが大切だ。今や人口の7.5%もの人々が潜在的に罹っていると言われる中、そのような過敏症になるリスクを踏まえて家を選ぶ人は少ないのが現実なのだ。

ある友人は今、住宅展示場で家探しをしているそうだ。展示場に健康的に安全を求めるのは、八百屋で魚を探すようなものだ。せめて少しでも気にしてもらえるといいのだが。

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