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家づくりはCO2排出から貯蔵へ|田中優コラム#167

 
前回、天然住宅の場合、「建てて住んだ」ほうが地球温暖化対策になるという話をした。実際に計算してみると、二酸化炭素排出量はどうなるのだろうか。
 
いくら口先で、カーボンニュートラル(炭素的に中立、二酸化炭素を排出した分と植林した木々が吸収する二酸化炭素量が同じ)と言っても、現に木々が成長してみないと本当かどうかわからないし、そもそも植林しているかどうかも怪しい、となればちっとも地球温暖化防止に役立っていないことになりかねない。
 

その点、天然住宅では毎年二回の森の手入れに出掛けていて(今年だけはコロナのせいで中止になってしまったが)、これまで10年以上続けている。260ヘクタールを超える広大な森(「エコラの森」という)の手入れを手伝っている。
森の作業の中でも大変な「下草刈り」は、飼っている牛たちに代わりに食べてもらい、山には、山を壊してしまう重機を入れず、代わりに冬場に「馬搬」をして木材を出してもらっている。また、除草剤のような有害物質を全く撒かず、周囲の山を含めて木こりたちが手入れしている。栗駒では、皆伐をしない持続可能な林業を営んでいる。
 
言葉だけでなく、現実に管理し続けているのだから、すでに成長した木々の分だけでも十分な量の二酸化炭素の固定をしている。
 
さらに使用後の木材(建材などとして使わない端材)は、森のすぐそばにつくった「エコビレッジ」で消費する。このエコビレッジでは、そのようなバイオマス燃料をガス化して電気や暖房の熱源として使っている。その分もまた化石燃料の節約になる。
それだけではない。ガス化した木材は使用後、「木炭」となって残る。この木炭もまた山の土壌を豊かにするために撒かれる。つまりその炭もまた土壌に固定、蓄積されるのだ。
 
そう使われる保証はあるのかと思うかも知れない。ぼくや天然住宅が関わり続けることで、それを担保していきたいと思う。山へ最初に牛を入れたのはぼく自身の紹介だったし、今もなお、山の管理をする「NPOしんりん」の理事もしている。さらに化石燃料の代わりに薪を燃やして熱を届ける事業「(株)ウエスタ」の株主であり、今も関わり続けている。自分が出資者としても関わっているのだから、責任をもって実施していると言えるだろう。
 
そして「一般社団法人天然住宅」の代表を務めている。「株式会社天然住宅」の代表取締役をしている田中竜二は私の長男でもある。天然住宅が、この宮城県加美町にある「(株)ウエスタ」と協働作業を続ける限りは、この循環に加わり続けるつもりだ。
 

日本の住宅は信じられないほど短命だ。それは、わずか10年ほどで住宅の価値がゼロになることが原因の一つになっている。しかし天然住宅は最低でも100年、できれば300年使ってほしい。「住み継ぐ」ことを前提とした建物にしてある。大事な部分は高くついても妥協せず、長く使えるように設計している。
 
長期的に住宅を使い続けられると、建物を建てるのに要したエネルギーはその分だけ温存されることになる。築後20年で解体されると計算されていたものが、100年なら5倍、二酸化炭素を排出せずに使える。現実に私たちは植林もしているが、寒い宮城の北の土地であっても約50年で次の木が育つ。育つ間に二酸化炭素もたっぷりと吸収してくれる。建物が50年を超えれば、次の木が育つのだから、その分だけ二酸化炭素の実質的貯蔵になる。これを「持続的な利用」と言うのではないか。
 
家を取り壊したら、「エコビレッジ」の熱源として届けられる仕組みを作りたい。そうすれば、熱利用された分だけ化石燃料の節約になるだけでなく、炭にした木材は森林の土壌として炭素貯蔵される。もはや二酸化炭素の排出どころか貯蔵の方が大きくなる。
 
それでも「馬鹿げた試みだ」と嗤うだろうか。大真面目に地球温暖化を防ぐために、きちんとした木造住宅を建てようと思うのだ。
 
 

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