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樹木と微生物の力|田中優コラム#169

前回のつづき)
「バクテリゼーション」と同じように、人間を含めた生命体には仕組みがあるのだと思う。「バクテリゼーション」がなぜ簡単に効かないかと言えば、ブレーキも同時に必要なんだろう。いやもしかしたら、もっと複雑な工程を通じてしか効かないのかもしれない。必要なのは、ブレーキとアクセルのペダルだけじゃないかもしれない。その複雑なつながりの中でしか効果を持たないのかもしれない。
 
そもそも体の中を、善玉・悪玉で二分することの方に無理がある。じゃあ、体内にウイルス・病原体が入りにくくしているのは何だろう。「白血球・マクロファージ・リンパ球・ T細胞・ B細胞」と数えたとしてもそれだけではないし、同時に機能するわけでもない。全体として機能するのだ。
 
全体として機能して、これがすべてというものはない。バクテリアが「バクテリゼーション」として機能するには、同じようにいくつもの関わりの中で機能しているはずだ。単純にAボタンを押したからBが起こるわけではないのだ。
 
同じようなことを地球温暖化問題でも考えてみた。二酸化炭素は原因だが、排出しているのは大企業で、人々一人一人ではない。責任がないと言っているのではなくて、私たち市民には解決策がないと言っているのだ。自分が出していないのはいいけれど、減らしても解決までは至らないのだ。

そこで二酸化炭素の吸収側の歴史をたどって調べてみた。生まれたての生命のいなかった時代の地球には酸素もなくて、大気中の空気の97パーセントは二酸化炭素だった。何億年もかかって海洋中に生命体が生まれたが、陸に上がることはできなかった。大気には放射線のような宇宙線が飛んでいたし、有害紫外線を遮るものもなく、呼吸するための酸素もなかった。
 
最初に酸素を生み出したのは、光合成する「シアノバクテリア」だった。それはサンゴ礁のようなものに寄生して、少しずつ海洋中に酸素を生み出していった。しかし海洋中にはたくさんの鉄分があり、鉄を酸化させて降り積もらせることに使われてしまった。さらにサンゴ礁のようになった岩に憑りついたシアノバクテリアは、自分が分解するときにも酸素を必要としたから、実質的に増加する分はわずかだったのだ。
 
それが劇的に変わったのが約5億年前だ。生命体は陸上に上がり始めていったのだ。最初は微生物と海藻だった。それがやがて樹木のようになっていく。樹木は単独では生きられなかったが、微生物と共生することによって陸地の水分不足や栄養不足を解消した。そして陸上にはたくさんの植物が繁茂した。海洋中のシアノバクテリアは分解するときに酸素を消費したから大気中の酸素はなかなか増えなかったが、陸上では違う。陸上の樹木は分解しても土壌を作り出し、土壌中に炭素を残すのだ。
 

「全地球史アトラス7」より

 
大気中の酸素が増え、オゾン層を厚くしたのもそのおかげだった。そうなると昆虫も爬虫類もみんな陸上に上がるようになり、生物の大進化が始まった。地殻のマントル対流のおかげで地球に磁場が生まれ、宇宙線をはじくようになったおかげでもある。

地上に生命体が上陸したのも酸素濃度を高くしたのも樹木と微生物のおかげだった。それがなかったら、97パーセントの二酸化炭素で即座に窒息死するはずだ。その時のブレーキとアクセルは光合成する樹木と動植物の分解と山火事だった。温暖化防止のブレーキは樹木と微生物だった。この力をもう一度生かせないだろうか。

 

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