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「満車状態の駐車場」の活用|田中優コラム #176

前回、ウイルスに対する「木材の不活化効果に期待する」というような話をした。それとよく似た話で、生物が進化の間に獲得した対処方法として、どうも以下のようなものがあるようだ。
それは、「すでにその場所が他のたくさんの微生物に囲まれていて、入る余地がない」という状態を作ることだ。
 
具体的には腸内細菌をイメージしてもらいたい。病原菌性の微生物もいるが、それが腸内に居つくことが難しいのだ。もちろん胃酸などのせいもあるが、そこを抜けても腸にはたくさんの菌がいて、すし詰め状態になっているせいだ。
たとえ腸内に「糞便移植」という「過激な」方法で直接菌を届けても、居ついてくれるとは限らない。たくさんの菌の中に新参者が住みつくのは難しいことなのだ。
 
これは私たちの体のあちこちの表面に住んでいる「常在菌」と同じ戦略だ。「常在菌」は体のどこにでも住んでいて、しかもいつもいる。だから「常在菌」と呼ばれるのだ。
 

大事なのは「常在菌」優位の状態を維持すること



これについてあの有名な花王が「手荒れと手指衛生の科学」という論文を発表している。
かいつまんで要約すると、「体表面には「常在菌」と「一過性細菌叢」がいて、「一過性細菌叢」に分類される細菌には起炎菌として感染症を引き起こすものが多く含まれる。

一般的に、「常在細菌叢」を優位に残し、「一過性細菌」を除去することが望ましいと考えられている。皮膚表面では、通過菌による一過性細菌叢が形成し難い環境(手荒れや傷をなくす)にすることが重要であると考えられる」という。

参考資料:花王株式会社 化学品研究所 C&S商品開発センター長 日置祐一氏による論文「手荒れと手指衛生の科学」は >>こちら

 
つまり私なりに解釈すると、「常在菌」は善玉で、「一過性細菌」が問題を起こす。その「常在菌」優位の状態を維持できることが大事だというのだ。

それだと皮膚感覚的によくわかる。なんでも殺菌ではなく、常在菌のコンディションが良くなるように維持すれば良いということになる。だからぼくは何でも「殺菌、除菌」というような対策は良くないと思う。殺菌すれば、そこに新たな雑菌が繁殖するためのパラダイスを作ってしまうし、何を殺してしまうかわからないからだ。
 

除菌や殺菌よりも・・


ウイルスは菌の100分の一の大きさだから、とてもなくすことはできないし、すべてを殺菌することなどできない。ならば逆に、人体にとって都合の良いウイルスだけ残せば良いではないか。それなら、その場を「常在菌」で「満車状態の駐車場」のようにしておけばいいのではないか。
 
「ファブリーズ」の除菌・殺菌は「人体の経口致死量がわずか1~3gの猛毒」という「第四級アンモニウム塩」が主成分だ。神経質になって逆に悪化をもたらすより、「常在菌」に頑張ってもらって安心なほうが良くないか。
 
ぼくはそもそも安全志向で保守的だ。なるべくなら安定していたいし、机のパソコンの配置さえ変えたくない。だから「コロナが流行してから、新しい生活様式」だとか言われるとうんざりする。太古からの生物進化の流れに沿って生きたいのだ。

  

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