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土中環境問題?|田中優コラム #179

「土中環境」なる本を読んだ。知る人ぞ知る「一般社団法人 大地の再生」のことをもっと知りたかったからだ。しかし読んでも今ひとつわからない。でもホームページに載っている事例を見たらよくわかった。
 
要は大地は窒息させられているのだ。コンクリートやアスファルト、コンクリート擁壁やダムなどで。だから空気と水を通してあげようという話だ。
言うのは簡単だが、幹線道路が走り、ダムが造られ、砂防ダムや治山ダムが造られていて大地は窒息している。どうしたら心地良い流れを取り戻すことができるのか、考えると呆然とする。私たちの文明はあまりにも地中のことを考えずに進んできてしまったからだ。
 
かつて区役所で土木部に所属していたことがある。工事はいかに水と土を遮断し、きれいな街を作るかしか考えていなかった。小川も埋め立て、かつての湿地も埋め立てて大地を窒息させていた。そのことに気付くとぞっとする。それはミクロな事例だが、かつてのご神木の樹勢を回復させた事例などを見ると、何をしているのかわかる気がする。
 


▼この動画もわかりやすい。
今、大地が呼吸不全を起こしている。自然の蘇る力を生かした開発への移行
 
ここで考えたいのはもっとマクロな回復だ。土中の環境は私たちが暮らしている大気中の状態とは大きく異なる。私たちが地上で感じるのは重力と風力の強さで、モノが動くのはだいたいそのどちらかの力だ。もちろん地中も重力が働くが、大気中のようにモノの重さですぐ動くというものではない。すでに地中には大地の重さがのしかかっていて、モノが動くのは圧力が加わるからだ。大地が重すぎれば水だって上に登るし、隙間が狭ければ重力に反して噴き出すことだってある。土中は「圧力」の影響がより強く働く世界なのだ。
 
山の崩壊も鉄砲水の噴出も圧力が引き起こす。ヘドロ状になった構造物の下だって、圧力の影響を受けている。当然それは樹木に栄養を与えなくなるばかりか、腐敗した地層は植物の根を痛めて枯れ死させる。枯れなくても勢いが弱まり、病気になり害虫に侵略される。そう思って自然の風景を眺めると、土中で何が起きているのかが感じられる。もちろん土中の樹木は根ばかりでなく、菌根菌と共生して構成されている。見えないだけで、地中には大変深刻な環境破壊があるのだ。
 


幸い日本は他の先進国ほどひどい状態ではないし、他の生命体との関わりもまだ少しは残っている。他の先進国では殺虫剤や除草剤を撒いて他の生物を皆殺しにするし、土地の状態も良くない。少数ではあるが、土を壊さない「農」をしている人がいるおかげだ。
 
これをもっとマクロに広げていくことが必要だ。ダムの周辺では貯められてしまった水の圧力によって、山の中には水柱が立っているみたいな状態になって、崩壊するのを待っているだろう。これをイメージできるようになることで、山の劣化を防ぐこともできるようになるだろう。

くりこまの「エコラの山」では、山を壊さないために重い重機を山に入れない。その理由がやっとわかった気がする。伸びた木を伐採するのは良いが、山を重機で潰したり、壊したくはないのだ。

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