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住み継いでこその住宅|田中優コラム #196

 私たちが協力して山を守っている「くりこまくんえん」は、本当に持続できる山を守っている材木屋だ。森の木は私たちも出かけて参加して手入れしている森だ。森を手入れしていくには、毎日ではないが手入れを続けていかなければできない。その森は「エコラの森」と呼ばれる260ヘクタールもある広大な森だ。森は広いが木々がモザイク状に植えられ、山の峰には根を張る広葉樹が固め、その下にスギ、ヒノキ、マツなどが植えられている。
 
 しかし単純な植林だけの森ではない。そこに元から生えていたであろう広葉樹のサクラや楢、樫、クリやケヤキなどのたくさんの広葉樹もまたモザイク状に生えている。どうやら古く伊達藩の時代から、そうして守られてきたようだ。
 
 ところがバブル崩壊時に持っていたオーナーが森をリゾート開発業者に売り渡し、そこでバブル崩壊。森は債権者に不法に伐採されてしまった。その痛めつけられた森を「くりこまくんえん」が買い取って、森を再生させようとしている。

 しかし森は保安林に指定されていた斜面の森までも乱雑に伐採されていた。くりこまくんえんでは、保安林だった傾斜のきつい森を含めて、再び再植林し続けている。その森のスギもそれからすでに20年以上経ち、出荷できるほどに育った。その木材を伐採して出荷し初めたところだ。だからどの木もどこに生えていたかわかり、それを大切に使っている。
 
 森は大切に扱われ、林野庁が勧めるような部分的な皆伐も行わない。必要になった木を一本ずつ択伐し、伐採した後には一本ずつ植林する。どれも大切な一本だから、どこの木も大切に使う。家の柱や梁になる建材、フローリング、家具材を選別し、残りも可能な限り住宅材として使い、残りの木も「チップ材」や「薪材」にする他、枝も葉もすべてエコヴィレッジの「バイオマス燃料」として使う。バイオマス燃料として発電と給湯に使った後の「炭」さえも、森の土に還して森の微生物の生活を支えるようにしている。
 
 ここでは何一つ無駄にはしないのだ。普通の木材が、体積の3割程度しか使われないのに対して、ここでは残さず100%使っている。

 もちろん住宅もそうだ。もし使い続けようとするならば、300年は使えるように建てる。スギは最善に生かすならば600年間使えるものだから、それに応じた利用の仕方をしているのだ。その木材は早く乾燥させるために120℃もの高温で乾燥させるのが普通だが、それでは木材の香りがする元の「精油分」が消えてしまう。すると木材はスカスカに弱くなり、殺菌・ウイルス中和化の力を失うばかりか粘りが失われて強度にすら影響する。「伝統大工」が嫌うような粘りの強度がない木材になり、耐震性にも影響するのだ。

 大事に作られた木材は、スギなら置かれた部屋のダニを3日で失くすほどの殺菌力がある。しかもその殺菌力は人に対しては影響がないどころか、睡眠の深さを向上させる。

 本来なら手刻みして接合部の長い部材を組み合わせるのだが、価格の点から一部は工場でプレカットすることで値段を下げている。そうした努力を積み重ねて「KAERUIE」はできている。できるだけ長く使ってほしい。世代を超えて使われる「住み継ぐ家」にしてほしい。家は新品の時よりも使われた方が味のある色になって強度も高くなっていく(日本の針葉樹は伐採してからも200年間強度が上がっていく)。そんな家として使ってほしい。
 
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