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断熱内窓は暖かい|田中優コラム #206

 昨年「断熱内窓」の工事をした。
 
 それから初めての冬だ。岡山というと、越して来るまでは暖かい場所だとイメージしていた。ところが寒いのだ。真冬になるとマイナス10度近くまで冷え込んだりする。この冬は年の瀬から冷え込んだ。それでも断熱内窓のおかげで、かなり暖かく過ごせる。
 
 ある会議で、「断熱内窓にしてから外が氷点下でも室内は10℃以上を保っている」と話した。ところがこの会議のすぐ後、この冬一番の寒波が訪れた。なんと室外ではマイナス8℃まで下がっている。この日は自分の言ったことは誤りだったと気づいた。室内の温度は10℃ちょうどだった。もちろんストーブを点ける前の話だ。ペレットストーブに点火すると、温度はすぐに上がり始めた。
 
 断熱内窓を設置し、もうひとつ大きな変化があった。窓の結露がなくなったことだ。結露は空気中に含まれた水蒸気が急に冷やされることで空気に含まれていられなくなり、水滴になって窓ガラスの表面などに貼りつくことだ。だから空気中に含まれている水蒸気の量が多い真夏の空気が冷やされると、結露する量も多い。建物で考えたら、夏場のほうが怖い。水蒸気が壁の内部などで結露して、建物を腐らせたりカビだらけにしたりする可能性があるからだ。
 
 水が水蒸気になる時には周囲の熱を奪って涼しくする。それとちょうど真逆に、水蒸気が水になるときには周囲を暖かくする。この熱量は同じ量だ。形が変わる時に発する熱は、どちらも同じなのだ(下図)。
 

 
 壁の中で結露する時には、壁に熱を与えて温めるのだから一層カビや腐朽菌にとって居心地の良い温度を与えてしまう。「壁内結露」が建物にとって怖いのは、建物にとって最も弱い弱点を突くからだ。しかも見えず気づきにくい壁の中で。
 
 扇風機が良いのは温度と関係なく、ただ体感温度を変えているだけだからだ。風が当たると涼しく感じる。多分ミクロに言うと、体表面の汗などの水分が乾く時に、熱を奪ってくれているからだろう。風はどんどんと届く毎に新しい空気となって更新してくれる。新しい風は表面積が大きいから涼しいのだ。人間というのはたっぷりと水を含んだスポンジのようだ。蒸散熱のおかげで涼しさを維持しようとしているのだ。
 
 これを「家」という狭い器の中に閉じ込めてしまうなら、とても厄介なことになる。汗をかいて熱を発しようとしても狭い範囲の中でしかできないことになる。その中では汗で温度調節する「生物」というのは厄介な水蒸気発生装置でしかない。その発想の先に「高気密」住宅という考え方があるように思う。つまりそこで考えている住まいは、生物がいないことを前提にしたいのだと思う。
 

 
 天然住宅の「断熱内窓」は、木製の窓をアルミサッシの窓の内側に並べただけのものだ。木製だから、アルミのように結露しにくく空気も通る。結露するとしても、問題になる空間はアルミサッシと断熱内窓との間だけだから、水蒸気量も温度差も大きくはない。だから予想以上に効果があるのだと思う。ぼくがここで思うのは「迷路効果」だ。水素という最も小さな分子を貯蔵するタンクを発明できたのは、分子レベルでは大きいはずの粘土を薄く多層的に配置したことによる「迷路効果」によって、水素を通りにくくさせたおかげだった。
 
 家も同じではないか。家は空気が通りながら、それが素通りできない構造の「迷路効果」によって多層的に通過空気量を抑制するのが良いのではないか。少なくとも生物たる人間が住まおうとするのであれば(下図)。
 

参考サイト:https://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/story/no8.html

 

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