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新たな木材乾燥の仕組みを|田中優コラム #222

 
このコラムの218号で、「ギュッシング」のバイオマス施設が破綻状態であったことは書いた。その大きな原因は「木材の乾燥が甘いこと」で、甘い乾燥の木材を十分に乾燥させるために熱量が使われてしまっていて、せっかくのバイオマスの燃焼も、乾燥のために熱量が使われてしまって発電効率も燃焼効率も低すぎるのだと思う。するとこの解決策は、木材の乾燥度を上げることだ。そこまでわかったとしても木材を乾燥させるのは簡単なことではない。
 
無垢材での建築においても木材の乾燥は重要な工程の一つである。
 
乾燥度を上げるのに思い浮かぶのは、木材内部に含まれる水の温度を上げて蒸発させることだ。一般的な木材乾燥炉は100℃以上に上げて蒸発させようとする。バイオマス発電のエネルギー源としては問題ないであろうが、建築材にするとなるとその乾燥方法は問題が残る。木材の内部にあるリグニンが変成し、色が変わってしまうし強度も下がる。他にうまく乾燥させる方法はないだろうか。


その方法をあれこれずっと考えている。218号で書いてから、その解決策を書いていないことが気になって仕方なかった。というのも、未だに何が効果のある乾燥方法なのかわからないでいるからだ。
 
でももしかしたら可能かもしれないと感じ始めていることがある。いよいよだが、ここからは他に特許を奪われないようにしながら、実際に実験してみようと思う。
 
「蒸発」させるのに、気圧を下げて低い温度で沸騰させるのも可能かと考えた。しかしリグニンの変質は避けられないかもしれない。もっと木材への負担が少ない、沸騰以外の乾燥方法はないだろうか。
 
そもそも水分はどんな温度でも気体に含まれている。「沸騰」させると、分子運動が大きくなって気体になりやすいという点だけが違っている。つまり沸騰させなくても気体に水分を含ませたり、逆に結露させたりすることは可能だ。それが「飽和水蒸気量」だ。
 
水蒸気は、沸騰して気化しなくても、温度に応じて水の含まれる分が発生している。それは温度に比例するが、温度が低くても発生している。水蒸気に含まれる水分は、温度が低くなると入りきれなくなって結露する。これを応用して低い温度でも水分を抜くことができるはずだ(図1)

 
その気体状の水蒸気の水分を奪うのに、飽和水蒸気圧を超えれば結露して水蒸気を水にして流せるはずだ。
 
それにさらに水の純度を高めて滑りやすくし、水分を表面から木材内部の深いところまで振動させよう。それができれば従来はなし得なかった木材の乾燥が、沸騰させることなしにできるはずだ。その実験を進めよう。
 
私の考えているところでは、その性質を利用し、木材乾燥を実現できる方法が成り立つだろう。すると沸騰させるほどの熱量を与えずに木材乾燥ができるのではないだろうか。ギュッシングの失敗は熱量を沸騰のために使いすぎた結果だと思う。それを成り立たせれば、ギュッシングのバイオマスも失敗しなかったはずだ。
 
さて、さらに実験してみよう。
 

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