(この原稿は2022年9月に執筆しました)
近年、台風がやけに沖縄周辺で発生する。しかも発生したばかりの台風は、本土に来るまでの太平洋上で発達する。来る頃には本土南岸近海の蒸気を集めて大型化している。今回の台風は「未だかつてない規模だ」と言われても、何度も同じ言葉が使われているうちに陳腐化する。今回はどうだっただろうか。
僕が住んでいるのは中国地方の岡山だが、近づいて来る少し前の風は大きかったものの、台風が中心付近で二つに分かれ、そのおかげでその後は大したことはなかった。十分な日照がなかったので、一日だけ電気をセーブしながら使った。明日午前には日照が戻るので、それだけだ。停電もないし目立った電気不足もなかった。
それより今回もまた強風を伴った「風台風」だった。今回は「未だかつてない」ことにビビッて、窓を板で補強しておこうかと迷ったが、その必要もなく過ぎて行った。ただ強風に飛ばされそうなものを風に隠れる場所に移しただけだ。
子どもは風や叩きつける雨の音を怖がるので、それを気にしていた。とりわけ怖いのは山を吹き下ろすように届いてくる風だ。実際、強風時には隣にある木々が酷く揺さぶられ、何本かはそのまま倒れかかったままだ。後で切り倒さなくてはならない。
ぼくが心配していたのは建物の揺れだった。子どもの頃から台風の強風が来れば、木造の建物は揺れた。その揺れ方と周囲に響く風音で、今回の台風がどれほどのものかを体感していた。今回はしかも「未だかつてない」のだ。ところが天然住宅の「新板倉造り」で建てた我が家はちっとも揺れなかった。
普通の建て方なら柱を立てて、斜めに筋交いを入れて建てる。ところが「新板倉造り」では、その壁全面が板で覆われている。使う木材の量としては普通の3~4倍だ。単に木材量の問題ならさほど高くはない。しかし作り込むのに手間がかかるのだ。そのせいだろう、その未曽有の風と雨の台風でも微塵も揺れなかった。
しかし我が家をめぐる「ハザードマップ」は去年変わった。山側から流れる土砂が、災害を起こすかもしれないと。知り得る限り、ここ百年ほどは土砂災害が起こったことがない。しかし「ハザードマップ」は変わってしまった。ここに家を建てるには、不都合が生じることになるだろう。上には隣家も建っているし、それほどの傾斜がある土地ではなく、逆に家の下の水田から見れば約二メートルほど高い位置にあるのだから、むしろ安全だと思うが。
山側には高い木も生えている。その木を眺めると、むしろ力強く感じる。そして今回の台風でも、我が家の造りは揺れることもなかった。建てるなら「板倉造り」がお勧めだと思う。
田中優コラム、そのほかの記事は
>>こちら