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「絶望から希望へ」の転換(前編)|田中優コラム #232

もともと僕が地球温暖化の話を知ったのは30年以上も前の話だ。だから当然知った気になっている。でももしかしたらと時々調べる。今回はそこで見つけた話をしよう。
 
先に言っておくが、これは温暖化を推進する営みに免罪符を与えるためではなく、健気に働く森をきちんと評価し、これ以上壊さないための話として聞いてほしい。
 
見出したのは、日本の森の驚くほどの二酸化炭素の吸収能力である。
下の図を見てほしい。
 

これは、東京大学大学院農学生命科学研究科の発表した研究成果からの引用だ。
 
まず、その数字の違いに驚かされる。毎年吸収される二酸化炭素の量はこれまで推定されていた量の2.44倍、森林の炭素蓄積量も1.75倍あったというのだ。もうほとんど「天文学的」と表現したくなるほどの差で、その吸収量は実に日本の二酸化炭素排出量の17%に当たる。
 
現状の排出量はもちろん排出量オーバーで、日本は落第生だと思うのだが、それを一気に解決へと進ませる可能性すらある。最低限すべきこととして、石炭火力発電をやめることだけは必須だが。しかしそれ以外の二酸化炭素の排出量なら、森林の二酸化炭素吸収量で取り戻せる可能性があるのだ。
 
何が間違っていたのかを知ると納得できるかもしれない。それは

1.森林の二酸化炭素吸収量の過小評価の原因は、「収穫表」に基づいて推定された数値(m-NFI)であり、それは実際の森林面積の10%が考慮され損ねている算定方法であったこと。
2.その収穫表は1970年頃に作られたもので、時代遅れとなっていたこと。

さらに

1.樹木の成長が止まると炭素吸収量も比例して止まるので、今まで老齢木の炭素吸収量はとても少なく見積もられてきた。しかし、近年の研究成果により、成長がほとんど止まると考えられていた老齢木の成長速度は意外と大きいということが判明している。つまり、1970年代に作られた「収穫表」では、老齢木・巨木の成長速度が正しく反映されていないと考えられる。
 
2.近年進む地球温暖化は、特に日本のような温帯の森林の成長速度を高める。また、近年進む大気中二酸化炭素濃度の高まりは、大陸からの窒素降下物がある日本では、直接の施肥効果が働くので、近年の高められた成長速度を1970年代に作られた「収穫表」では表現できない。
 
3.適切な森林管理、特に適切な間伐が行われているという前提で「収穫表」は作られているが、近年問題となっている「間伐遅れ」の条件下では、「収穫表」は正しく森林材積を推定できない。

 
また、間伐不足は森林内の比較的小さい木の本数とバイオマスを増やし、結果として森林全体のバイオマスを増やすことになる。「間伐遅れ」の条件下で「収穫表」を用いて、大きい木(材を得るために必要な木)から小さい木(材を得るには不十分な木)までの「森林総材積」を推定すれば、それは過小評価につながることになっていた。

ではこの調査によって今も公表されている「二酸化炭素排出量」は訂正されるかというと、それも困難だ。
というのは2011年に南アフリカ共和国のダーバンで開催されたCOP17で、「森林経営」による二酸化炭素吸収量を排出削減量・吸収量に算入することが義務付けられたが、「森林経営」による吸収量の算入上限値は、各国とも基準年(1990年)総排出量の3.5パーセントまでとされたからだ。17%吸収が現実なのに、3.5%までとされてしまうのだ。この結果、この研究結果はほとんど無視され、ほとんどの人が知らないものとなったのだろう。
 
しかし私たちが活動するために必要な数字は、政治のための数字ではない。
現実に私たちが直面する数字だけを問題にしよう。同じようなことはたくさんあるが、真実の数字のみを相手にしたい。するともっと多くの局面で、私たちには未来を解決する可能性が見えてくる。ほとんど「絶望から希望へ」の変換だ。

絶望から行動を起こすことは難しい。しかし、希望の光があるのであれば、そこからアクションを起こすのはきっと、より簡単なものになるはずだ。次回もまた、「絶望から希望へ」と転換する話を届けたいと思う。
 
絶望から行動を起こすことは難しい。しかし、希望の光があるのであれば、そこからアクションを起こすのはきっと、より簡単なものになるはずだ。次回もまた、「絶望から希望へ」と転換する話を届けたいと思う。
  

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