「住まいに不可欠なもの」と言えばたくさんある。たくさんありすぎて何を言ったらいいかわからない。しかし、天然住宅仕様の家に住んでいる中で、これはと思うものは挙げられる。その方法で考えてみたい。
湿度温度を調整する木造住宅
まず第一に重要だと思うのが、「木造住宅であること」だ。
木造住宅のメリットはたくさんあるが、何より国産の天然素材で作られていること、遠くから運んでくる必要もなく、気候に合った素材であることだ。
気候の移り変わりに適切に反応することで、湿度を調整し、温度に応じて適切な状態を維持してくれる。
一部の石油製品のように断熱できても結露するのを防げないということもなく、「正倉院」のように、ある程度まで適切な湿度を保ってくれる。
そして生きていた時の木材の生命を殺さない低温・中温(40〜60℃)で乾燥させた木材なら、乾燥させてからも木材の生きていた時の性能を保っている。
フィトンチッドの効果
中でも重要なのは、木材が生きている時に周囲の外敵から身を守るために蓄えたフィトンチッドの効果だ。
フィトンチッドには、頭をスッキリさせたり、ストレスを和らげリラックスさせる効果があることが知られている。
その効果の中で特に重要だと思うのが、「殺菌・抗菌」効果だ。
フィトンチッドは樹種によって様々あり、板の匂いがそれぞれ違うのもそのせいだ。
中でもぼくが好きなのは「ヒバ」だ。
「蚊殺しの木」と呼ばれ、その香りは虫を寄せ付けない。かと言ってきついわけではなく、むしろヒノキと比べてまろやかな香りがする。
蚊はそもそも壁面に付くので、そこがヒバだと留まっていられなくなる。だからそもそも部屋に入ろうとしないのだ。
我が家は腰板(腰の高さまでの板、元々は武士の刀がぶつかっても大丈夫なようにその高さまで板張りにしたらしい)がヒバなので蚊除けになる。
ぼくは化学物質の臭いが嫌いで、蚊取り線香はもとより殺虫剤も好きではない。そんなぼくにとってヒバの壁は、正に救いなのだ。
高温と低温乾燥材の違い
以前ブラジルのホテルに泊まった時、目覚めるとダニに噛まれていた。それはおそらく日本にはいないダニで、その後も数ヶ月間、腫れたり治ったりを繰り返した。
たぶんこうした慣れない虫刺されの予防に、木の精油分にあるフィトンチッドがいいのではないかと思う。
ところがその精油分は通常行われている木材乾燥(通常は早く乾かすために120℃までの高温で乾かす)では抜けてしまう。
天然住宅の木材は、精油分を残すために高温乾燥は行わず、せいぜい60℃程度までの中温で乾かし、その後さらに天日乾燥させたものを使っている。
このやり方は、乾燥させるための土地の広さが必要になるし、乾燥期間は一年以上になったりするので効率的ではないが、頑固にそれを守っている。
ダニを寄せ付けない安心の家
そのようにして乾燥させた木材は、予想以上の効果をもたらす。
例えば主要に使われるスギだが、精油分を残した杉板は、同じ室内にいるダニを数日で殺すか居なくさせる。
ある人の家に行くとぼくはダニに噛まれるのだが、この家なら安心だ。木造のほとんどがスギだから、ダニは居られない。まれに外泊するとよく噛まれる。ダニに好かれる体質なのかもしれない。だから何よりこの虫を寄せ付けない天然住宅なら安心して眠れる。
ほっとできる家がいい
通常のホームセンターに置いてある木材はすべて高温乾燥材で、ただのプラスチックのものと変わらない。それどころか木材の上にプラスチックや化学物質を塗った「にせ木材」が多い。ぼくは泊まった宿がウレタン塗装だらけだと、正直げんなりしてしまう。
しかし、そんなことを気にしすぎれば、泊まれる宿がなくなってしまう。だから余計に我が家に帰るとほっとする。やはり自宅はこんなほっとできる家がいい。
もしそんな風に暮らしたいと思うなら、私たちに木材を提供してくれているくりこまくんえん(KURIMOKU)に行って木材片をもらってきて、目の細かい網の中に入れ、サーキュレーターの前に置くといい。そうすればきっと同じ効果が得られるだろう。
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