入社1年目、天然住宅の新米スタッフ田村が、先輩スタッフにインタビューするこの企画。
記念すべき第1弾は、1級建築士であり、設計部長でもある小野寺をクローズアップします。
普段はあえて語ることのない設計士としての想いや、学生時代の卒業制作「ロックンロールミュージアム」のエピソードなど、様々な話を聞きました。
設計士小野寺の「本音」とは!?
経歴は?
「宮城県に生まれ、大学進学を機に上京しました。武蔵工業大学(現在の東京都市大学)大学院卒業後、アトリエ事務所と呼ばれる設計事務所に2年ほど在籍。その後、現在の天然住宅の前身となる設計事務所『アンビエックス』に入社し、今に至ります」
この会社に入ったきっかけは?
「当時所属していた設計事務所は本当にハードな職場でしたが、忙しさの中に楽しさはあり、建築士としてたくさんの経験を積むことができました。僕の原点です。
でもある日、自分が何をやっているか、建築をやる理由が分からなくなってしまったんです。あの時は『設計をする理由』を求めていたんだと思います。
そんな時、相根さん(前身会社の代表)の記事と出会いました。それがすごく分かりやすかったんです。『健康に悩んでいる人に自然素材の家を届ける』という理念が自分に響き、この会社で働きたいと思いました」
「そういえば当時、代表に手紙を書いた気がします。感銘を受けたっていうことを伝えたかったんです。今思うと若くて熱いですね(笑)」
こうして天然住宅に出会い、それから10年以上たった今も設計士として天然住宅を支える小野寺さん。
家づくりで、意識していること
「ふたつあります。ひとつはお客様とのかかわり方。もうひとつはプランニングの部分です。
お客様とのかかわり方では、『対等であること』を意識しています。
建築のことは当然自分のほうが詳しいから、知っているのに言わないとか、いいと思っていることを遠慮して言わないことはしないように気を付けています。
逆に生活のことはお客様に聞かないとわからない。だから、お客様とはかなり話をします。これまでのこと、未来のこと、大きな部分から話をしていくんです。
プランニングする上では、『回遊性』と『窓の位置』が特に大事だと思っています。
回遊性とは、行き止まりがないことです。なるべく行き止まりがないように、ぐるぐるまわれる動線を意識する。
さらに言うと、そこにたくさんの居場所がくっついてくるといいなと思うんです。日当たりが良い部屋もいいけど、北側に書斎を作って本を読むのに籠れる場所があったり、なんでもない場所に腰掛スペースがあったりするのもいい。僕が設計した昭島のスキップハウスはその一例です。
あとは『窓の位置』。機能的にも、見た目にも特に重要になります。光がどう入るか、風がどう抜けるか。それはかなり丁寧に設計している部分です」
「デザイン性」と「利便性」は両立する?
「僕は両立すると思っています。いいデザインはいい機能を持っていると思うんです。長く使われているものって、洗練されたデザインで美しさを兼ね備えていることが多い気がします」
そんな話を聞きながら思い浮かんだのは、小野寺さんが設計を担当した「高砂の家」。
2023年に完成したこの住まいは、洗練された和室が特徴で、自然素材の温かさや柔らかさと、小野寺さんの感性が光るデザイン、和室としての機能性を兼ね備えた建築といえます。
「和室の部分はお客様、下社大工、現場監督の濱中ともかなり話し合いを重ねました。床柱などは最終的に現場で調整しながら決めました。本当は事前に全部決めているほうがいいんですけどね(笑)。設計も営業も工事も社内に入っていて、コミュニケーションが密に取れるからこそできたことです」
天然住宅はどんな会社ですか?
「個人としては『自然体』、会社全体としては『びしっと』している会社ですね。天然住宅に所属しているのは13人ですが、どの人も『自然体』で『意欲的』で『個性的』。面白い人が多いんです」
天然住宅に居続けている理由は、「建物を建てることが社会的な営み」だと意識し続けられるからだと語っていた小野寺さん。
設計士としての仕事の苦悩や葛藤は計り知れませんが、小野寺さんと話していると、それを楽しみ、味わい、家づくりに愛おしさを感じているように見えます。
「家づくりの楽しさ」とは?
「施主様視点でいうと、『全部』を一度見つめ直せること。これまでのこと、これからのことを考える大きなきっかけになると思うんです。そんな大事な時間に設計士として関われることは、そりゃもう楽しいですよ!」
「あとは、制限がある中でベストな答えをどう出すかを考えることも楽しさの一つです。そういう意味で、住宅の設計は僕に向いていると思います。予算や広さなどたくさんの制限がありますから」
天然住宅に入る決め手となったその思いは、変わらないどころか、楽しさを携えて今も進化しているのだと感じました。
インタビューの最後に、小野寺さんの卒業制作「ロックンロールミュージアム」を見せていただけることに。建築家としての原点であり、今の小野寺さんが作られるスタート地点となったこの制作。優秀作品として建築雑誌に載ったそうです。「作るを楽しむ」ことはこの時から変わっていないのですね。
小野寺の設計した建てものの詳細は、こちらからご覧ください。