
こんにちは。設計の神山です。
春らしい日が増えてきてホッとしていましたが、寒暖差のある気候はまだ続きそうですね。
春まであともう少し、気を引き締めていきたいと思います。
前回は、マンションリノベーションの現場調査時に注意しているポイントについてご紹介しました。
今回は木造戸建の場合も含めて、リノベーション/リフォームを検討する際に確認している点をお伝えしたいと思います。

既存の建物がどれくらいの耐震性能があるか調べる
マンションなどの共同住宅では、耐震性能は築年数が重要な判断材料になります。
つまり「旧耐震」か「新耐震」かが一つの評価基準であるといえます。
1981年5月31日までの建築確認において適用されていた基準のことを「旧耐震基準」と呼び、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準として設定されています。
1981年6月1日以降に建築確認において適用されている基準のことを「新耐震基準」と呼び、「震度6強、7程度の地震でも倒壊しない水準」であることとされています。
新耐震では旧耐震の基準が補強され、より高い耐震性能が求められています。
木造住宅の場合でも、1995年の阪神・淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことをうけて2000年に建築基準法が改正されています。
これにより地盤に応じた基礎の設計や耐震壁の基準などがより厳しくなっています。
しかし、小規模の建物の場合は設計士にその構造設計をゆだねられている部分があるため、2000年以降に建築されたからといって安全だとは判断できないのが現状です。(今年の4月に法改正があるので、また状況は変わっていくと思います)

構造の様子のわかる図面が残っているか
木造戸建ての場合は、構造のわかる図面が残っていればそれが大きな手掛かりになります。
基礎伏図・床伏図・軸組図といわれるものに、柱の配置や梁の大きさ・スパンなどが記載されているため、どのような構造になっているのかがわかります。
建物の規模に対して耐力壁の必要量が足りているか、またつり合い良く配置されているのかも確認できます。
構造的に強くバランスのよい建物であるかどうかは、築年数でなく既存の図面から読み解くことが多いです。

木造戸建の場合は既存の構造の状態を確認しながら設計する必要あり!
既存の構造の状態を確認して、いざリフォームのプランを検討しようとする際も、木造住宅の場合は設計が複雑になります。
マンションなどの鉄筋コンクリートや鉄骨造の建物は、構造が比較的シンプルなので、天井や間仕切り・床をすべて撤去して躯体だけを残す「フルスケルトン」の状態にしやすいですが、木造の場合は室内の柱や間仕切りが構造を兼ねている可能性があるので、全て取り払ってフルスケルトンにするというのが難しいです。既存の構造の状態をベースに、プランを検討する必要があります。
リフォームの計画上で、筋交いなどが入った耐力壁や構造体の柱を撤去する必要があった場合は、別の場所に釣り合いが良くなるように移動したり補強をして、建物全体が構造的にバランス良くなるように計画する必要があります。

木造住宅のリフォームは、設計が複雑なうえ施工面も難易度が高く、費用がかさみやすい傾向にあります。
既存の施工状態に応じて補強や補修の対応をしていかなければならず、大工さんの知識や技術も求められます。新築を建て替えた場合と同じくらいの費用がかかってしまうなんてことも考えられます。
それでも既存の建物が気に入っていたり、壊して新しく建て替えるのではなく上手に活用したいという思いで、木造住宅のリノベーションを選択される方も多くいらっしゃると思います。

また昔の建物は、今では高価でとても手に入らないような建材がさらっと個人住宅に使われていたりして、そういった古いものと新しいものがうまく融合されたら、新築には変えられない価値のある建物になると思います。
難しい条件を乗り越えて、その建物でしかできない唯一無二のものにできるのが木造住宅のリノベーションの良さでもあるのかなと思います。
自分たちだけでなく、時代に合わせつつ次の世代の人にも大切に引き継がれていくような建物にしていきたいですね。

戸建てリノベの施工事例