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温泉三昧、雨ときどき間伐|田中優コラム #10

エコラの森




毎年二回はエコラの森で山のお手入れ。今年も6月に天然住宅バンクが主催する「皮むき間伐ツアー」に参加してきた。エコラの森というのは宮城県栗原市の「くりこま木材」が保有している260ヘクタールの広大な森だ。もともとは山好きな人が植林した森のようだが、バブルの時期にそこを買い取ってリゾート開発しようとした会社があった。その会社はそこにボーリング場だのゴルフ場だのを想定したようだが、バブル崩壊であえなく倒産。その会社にカネを貸していた会社は群がって森を盗伐。おかげで保安林に指定されていた斜面の木まで、みんな伐採して持って行ってしまった。

銀行から森の金銭価値を調べてくれと頼まれたくりこま木材の大場さんたちは、その結果を報告している。「価値なし」だった。今の森は、残っている木材価格でしか測れない。盗伐されたその森に価値はなかった。ところがしばらくすると、その森の先に産業廃棄物の処分場が予定され、下流の温泉地に反対運動が起きた。そして再び銀行から「買ってもらえないか」と話があったそうだ。値段のつく森ではないだころか、再び植林するコストを考えたらマイナスなのに、くりこま木材は買ってしまった。そのままでは廃棄物に埋まることを考えたら、森がかわいそうで購入したのだ。

金食い虫の森



カネにならない木材しかない森は無価値だ。それどころか植林してやらなければならないし間伐などの手入れが必要なので、森は金食い虫なのだ。私たちが手入れを続けているのはこの森だ。もうすでに7年も手入れを続けている。年二回、春先に「皮むき間伐」して、その年の冬に伐り倒す。さすがに年数を重ねてきて、そろそろ間伐できなくなるんじゃないかと心配になる。

「大場さん、あと何年分間伐する森がありますかねぇ」と聞くと、「40年分位ですかね、その頃には最初の森の手入れが必要になるから、無限にありますよ」と心強い返事。気が遠くなりながらも今年も間伐に汗を流す。

カビの手形




でも今年の間伐は雨に祟られた。梅雨の雨とは思えないほどの強い降り。間伐できないほどの雨は初めての体験だ。

「どうしましょうか」

「じゃ、鳴子温泉で温泉三昧しましょうよ」

ぼくの気楽な戯言が現実になった。みんなで車に乗り込んで、間欠泉だの炭酸泉だの、吉永小百合の湯だのを回って温泉三昧した。ぼくはそれだけでも良かったが、初めて参加した人から「皮むき間伐を体験してみたい」の声が。

最終日、ついに雨が上がった。みんなで山の中に入って皮むき間伐する。皮むき間伐は成長する春から夏までの間に、スギ・ヒノキの皮を剥いて木を枯らしてしまう方法だ。特に雨の後はよく剥ける。4~5メートルの皮がするする剥けるので、みんな思う存分楽しんだ。皮むきしたきれいな樹皮に指を大きく広げて喜ぶ人、舐めて「甘い」と言う人。

でもね、冬に来ると手形や舌の形にカビが生えるているんだよ。人ってすごいばい菌の固まりなんだ。

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