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皮むき間伐の弱点|田中優コラム #12

良い方法なんだけど



皮むき間伐は木の性質を利用している。成長期である4月から8月のお盆まで、スギ・ヒノキはせっせと水を吸い上げる。多くの木の細胞は生きている部分が外側にあって、皮のすぐ下で水を吸い上げるから、その時期の皮はするすると剥ける。剥かれてしまうと水を吸い上げられなくなるので木は枯れる。葉が落ちれば光が入るので間伐したのと同じ効果があるのだ。

ただし葉が落ちるのは半年後だ。その間、葉は生き延びようとして木材の中の水分を抜き続ける。おかげで半年後には木の重さが半分に下がるので人力でも運び出すことができるようになる。しかも葉が水を抜くのは、「葉枯らし」といって倒したまま放置することで良い材を得る仕組みと同じだから、良い木材になる。

ところが良くない点もある。木が生きているうちはしなやかさがあり、風に吹かれて揺すられても被害は出ないが、枯れてからは修復できずに細かいひび割れが出るのだ。もともと習った時は数年放置してから伐採すると聞いたが、それではひび割れができてしまうので皮むきした年の冬に伐採することにした。これでひび割れの問題は回避できた。

夏場の木の問題



もうひとつ問題点がある。夏場に木の生命を奪う問題だ。夏場は成長期だから、木材はせっせと木の中にでんぷんを貯めこむ。これがカビやシロアリの餌となるのだ。だから使える材として伐採したつもりが、木材としては良くない。くりこま木材をはじめ、まともな林業家は冬場にしか木を伐らない。それはこのでんぷんの問題があるからだ。

この問題は避けようがない。そもそも林業では「主伐、間伐」などという区別はなかった。どの時点ても使う材として伐採するのだ。細ければ足場や電柱などに使い、太さに応じて野地板、葉柄材、構造材などと使い分けてきた。そして戦後まで、木材の最大消費量は燃料利用だったのだ。ところが燃料利用もほとんどなくなり、足場や電柱はアルミ・コンクリートに代わられ、間伐材の利用法がなくなってしまったのだ。そうした利用をするとしても、それでもでんぷんの多くなる夏場の伐採は勧められない。

そこで今は木材として使うことは考えず、燃料の薪やペレット用になる燃料材向けに傷や腐れなどで痛んだ木や細い木を中心に皮むき間伐している。夏に皮むきした材なら、冬にいきなり切り倒しても燃料として使える。しかも軽いから運び出しやすい。

間伐した森



それでも間伐を続けてきた森には結果が出ている。7年間続けてきた間伐は、森を光の入る明るい森に変えた。少しずつ奥地に進んできた間伐は、最初の年の森からだいぶ奥に入り込んだ場所になった。最初の間伐をした場所には森の中に石が積まれた場所があった。昔の人が何かに使ったようだ。その場所から歩くと、だいぶ奥まで進んできている。だけどまだまだだ。ぼくは春先になると森をきれいにしたくて伐採したくてうずうずする。

天然住宅は森を回復しながら、健康で長持ちする住宅を建てていこうという団体だ。だから森の手入れは本業のひとつだ。間伐を終えた森は明るくなって、しかも他の間伐と違って広葉樹を残した混交林をめざしている。

ぼくは今回、新築する家のテーブルにするためのキハダの一枚板を買った。くりこま木材に訪ねていくと、他で買う一枚板より、はるかに安い値段で好きな板を買うことができる。ぼくはそれを「大場コレクション」と呼んでいる。他ではチップにする雑木から、わざわざ引き抜いて挽いた広葉樹材の板だからだ。木が好きでなかったら、こんな面倒なことはしないだろう。

大好きなエンジュ、そしてキハダ。その色彩は心が震えるほど美しい。こんな木々の育つ森にしたい。そう思うとさらに間伐に力が入るのだ。

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