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太陽パネルの電気自給は「冬場」が大事|田中優コラム #21

オフグリッド生活のコツ



我が家は2年半前から、電気は太陽光発電とバッテリー、それをコントロールする「パーソナル・エナジー」という装置で自給している。のちに井戸を復活させて水道と入れ換えたら、井戸のポンプの電気消費のために電気が不足して停電する事態に遭った。そこで井戸ポンプのために「自エネ組」の作っている安価な再生鉛バッテリーによる自給装置も入れた。その二つのシステムによって電気は他から買うことなしに自給している。さらに万が一に備えて、ガソリン発電機も買って持っている。

こうして電気を自給してみると、だんだんコツがわかってくる。売電している家ではとにかく年中無休で発電しただけ儲かるから、平均して発電量が最も多くなる南向き約30°でソーラーパネルを設置する。ところが自給では違う。自給していて電気不足の不安を感じるのは冬なのだ。夏は朝5時から夜7時すぎまで明るかったのに、冬になると朝日は6時すぎに顔を出し、夜は4時には暗くなる。しかも冬の太陽は南の低いところを動くばかりで、ちっとも頭の上に登ってこない。そう、冬は太陽の角度が低い上に照らす時間が短いから発電量が不足気味になるのだ。だから太陽光パネルは30°ではなくもっと立てた方がいい。日差しに直角になれば、それだけ発電量は増えるのだ。

ガス給湯器の凍結防止ヒーター



それだけでなく、冬場には落とし穴のような隠れた電気消費がある。それがガス給湯器の凍結防止装置なのだ。我が家の給湯器についていた凍結防止装置は気温が3℃を下回ると作動し、10℃前後まで点いたままになる。しかもなんと毎時200Wもの電気を消費するのだ。最初から電気が乏しいのに、じっと莫大な電気を消費し続けてしまうのだ。もし一日中寒かったら、24時間で4800Whも凍結防止だけで電気を消費してしまう。一日平均の発電量は装置の3倍程度だから、平均的な条件でもその電気だけで1.6Kwもの太陽光発電パネルが必要になる。そんなに消費されたらもっともっと大きなパネルにしないと電気が足りなくなってしまう。

どうしたものかと考えあぐねていたら、金沢の『大門システム』の大門さんが「金沢ではそんな給湯器はあんまり見ないなぁ」と言うのだ。どうしてだろうと思っていたら、寒いので凍結させないために、室内設置の給湯器が多いのだ。調べてみると、外気を使って燃やして排気も外気に出す「FF方式」の給湯器があった。もう飛びつくように我が家は室内設置の給湯器を入れることにした。家の断熱はしっかりしているので、室内が3℃以下に下がることはまずない。すると冬場にも凍結防止装置なんてムダなものに電気を食われることもない。普通に暮らしていたらなにが電気を消費しているかなんて考えもしないだろうが、電気を自給すると、こうしたところに注意が必要になるのだ。

あれこれ工夫が楽しめる



普通の家庭で電気に悩むとしたら、「ドライヤーとエアコンと電子レンジを同時に使ったらブレーカーが落ちた」というものだろう。だから最大電気消費量に目が行く。ところが自給していると、最大消費より『累積の電気消費量』の方が重要なのだ。たとえばノートパソコンなんか、20Wぐらいしか電気を食わないのだから、ドライヤーの1200Wなんかとは比較にならないと思うだろう。しかしドライヤーを使うのはせいぜい10分だろう。ということは1200Whの1/6だから、200Whしか消費しないのだ。ところがわずか20Wのノートパソコンでも夜中じゅう消費し続けたら、発電しない夕方4時から翌朝の7時までで15時間も消費し続けるのだ。20W×15時間で、300Whの消費だからドライヤーより大きくなる。問題なのは少ししか電気を消費しないが、ずっと消費するノートパソコンの側だったのだ。ブレーカーは一時的に大量に消費すれば落ちるが、バッテリーではじわじわ型の電気消費が致命傷を負わせるのだ。

解決策は簡単だった。家電量販店で756円の「24時間電気入り切りタイマー」を買うだけで十分だった。ぼくが夜11時までパソコンを使い、朝は7時からパソコンを使うのだとしたら、その時間帯だけ電気を切れるようにしてしまえばいい。これでバッテリーのムダな消費がなくなる。そして一時的な照明器具は、人感センサー付にすればいい。人がいなくなれば勝手に切れるので、ムダに煌煌と光っていることはない。

こうして暮らしていくと気づく。ソーラーパネル以上に重要なのは、消費の節減なのだ。電気の消費を減らすことは、大きな発電所をなくすのと同じ効果がある。それを努力・忍耐ではなく合理的に無理なく減らすところに、腕のみせどころがある。ある人は玄関のチャイムの電気消費が意外と大きいことに気がついた。そこで我が家では、ドアにノックする古めかしいアンティークのドアノッカーを買おうと思っている。それはそれで楽しいのだ。

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