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気候の事情、個人の事情|田中優コラム #29

日本の常識、非常識



カナダ人のウィリアムは我が家を見学して、全く驚きもしなかった話がある。ぼくが(やや胸を張って)「この家は300年は持つように建てている」と話した時だ。特別意味のある言葉と受けとめなかったようだ。『Hmm…』みたいな感じだった。ところが彼が驚いたのは普通の話をしたときだ。

「日本では家は15年で価値がほぼゼロになり、26年程度で壊されている」と話したときだった。『スチューピッド(馬鹿な)!』と彼は言った。そんな短期間で家を壊してしまうことが彼には考えられなかったのだ。前号で話したように、建物の基礎は3メートル掘ってコンクリートを打ち、建物の周囲には合計4メートルの断熱を施す。そこまでして建てた家を30年経たずに壊すなんて考えられない。ところが我が家の近所で新築した家では、「子どももいないし40年持てば十分」と言って大手工務店の高い家が建てられた。それこそ『馬鹿な!』と思うのだ。

もうひとつウィリアムが驚かなかったのが、オフグリッドの話だった。土地の広すぎるカナダでは電気などの自立も不思議ではないのかもしれない。あるいは安すぎる電気のせいで、電気のことなど意識しないのかもしれない。なんだか予想外のことに驚かれ、そうでないところを『Hmm…』と素通りされる。

それだけ世界は広く、家は土地に合わせて建てられるということか。ぼくらが考えていることだって、世界では常識だったりそうでなかったりする。それでも特に寒くて断熱に苦労する国では、短期間で壊され、価値すらつかない短命な家だけは奇妙だろう。「夏を旨とすべし」なんていう日本人は、いったいどこから来たのだろう。「湿気による腐朽菌や虫の被害」と考える人もいる。南から来た民族の思いなのだろうか。

個人の事情



個人の事情もある。ある建て主さんは音楽家で、家は東京の都心に建てた。当然騒音の問題もあり、防音ルームを設置することにした。ぼくは天然住宅で建てられたそのお宅を見学して、初めてぼくの知っている学校の音楽室の防音ルームが、チャチなものだったことを知った。防音がすごいと思っていたのだが、そんなレベルではない。全く音が外に漏れてこない。室内ではドラムを叩いているというのに。

防音レベルを聞くと、65dBの部屋と75dBの部屋だった。「もしかして-65dBですか?」とおそるおそる聞いてみた。その通りだった。通常の住宅地(住宅専用地域)では、夜間の騒音基準は敷地境界線で40dBまでとなっている。-65dBとしたら室内の騒音レベルは105dB、-75dBの部屋では115dBまでの音を出していいことになる。その音は電車のガード下(100dB)、すぐ近くの自動車のクラクション(110dB)、飛行機のエンジン近く(120dB)と比較すればわかる通り、ものすごい防音レベルなのだ。音楽室の防音ルームは、防音扉の能力程度のものだった。

世界初!?安全な防音ルーム



天然住宅の防音ルームのすごさは、それを一切の化学物質なしに実現しているところだ。いつもの通り、化学物質の臭いがしないかどうか臭いを嗅ぐ。普通の家の「新築の臭い」はしない。いつも通りのスギの香りだ。

「ドアからは少しするはずです。扉は市販品ですから」と設計担当が言う。

「高くてオリジナルのドアにはできませんでした」と建て主さん。

「いや、臭いに気づきませんでした」とぼく。

「まだ完成ではないので、外には少し音が漏れているはずですよ。まだエアコンの工事がこれからですから」と。

これよりさらに音が漏れなくなるのかと思うと、オーバースペックではないのか。

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