日本の大工vsドイツの大工 勝負の行方
木材は生えている時の縦方向に強く、横方向に弱い。だから柾目の板というのは縦方向の木目が並んでいるのだから、その方向の木目を切らない方が強い。 だからドイツの大工の考え方は合理的で、木目を切らない水平の継ぎ手の方が強くなることはわかる。それにしても「これほどの差が」と思うほど、強度に差があったが。
木は自然のものだから個体差が大きい。しかしそれでは説明がつかないほど、 強度に大きな差が出たのだ。しかしこれだけでは「ドイツの技術の方が優れている」で、終わりにされてしまいそうだ。しかし違うのだ。ここに気候・風土が関わるのだ。
日本とドイツの違い
ドイツの建物が恐れるのは、強風のように建物にかかる荷重と上からの重みだ。しかし日本で家屋が倒壊する最大原因は、熊本地震の例を出すまでもなく地震だろう。日本の建物が耐えなければならない荷重は、上にかかるもの以上に下から突き上げるような揺れなのだ。したがって建物は上からかかる荷重に対応できる強度だけではなく、下からのあらゆる揺れに強くなければならない。もうお分かりだろう。「凄ウデ」で行われたのは上からの荷重実験で、継ぎ手の強さを上からの荷重で見ただけのものだ。これで大工のウデを見られたのではたまらない。日本には日本の気候と風土に見合った、強さとしなやかさが必要なのだ。
たとえば京都の町屋の造りは非常に弱いものだ。上から荷重がかかるとしたら持つものではない。しかししなやかさは抜群だ。縦の柱を横に突き抜けていく「貫(ぬき)構造」で柔らかな構造にし、地震や風の揺れにしなやかに揺れることで吸収して耐えていく。これを上からの荷重でテストしたら、もつはずがないのだ。
日本の大工は頑固なままで
だから日本の「金輪継」は、これまで通りの形でいい。ドイツのように柾目に沿わないままでいいのだ。荷重が下から縦横へかかるのだとすれば、上からの荷重だけに対応していたのでは、かえって弱くなりかねない。硬直した構造で強くするよりも、しなやかに力を分散させる仕組みがいい。そう考えると『西洋かぶれ』と言いたくなる程ばかげた仕組みに目が行く。
日本の建築基準法では、土台、構造の木材を基礎コンクリートにがっちり金属で留めなければならないが、地震の時には土台、構造材が割れてしまって使い物にならなくなる。一回目の地震に耐えられても、群発地震のような次の振動には耐えられなくなる。昔からの建物がそうであるように、硬い石の上に乗せるだけの「石場立て」の方がいいではないか。古今東西、「~かぶれ」の人たちは自分で考えようとしないからこういうことになるのだと思う。日本の大工は頑固なままでいいのだ。