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この世にムダなものはない|田中優コラム #48

広葉樹の魅力



広葉樹の面白さは生えているときの姿と、木材にしたときのギャップではないだろうか。クリもキリも生きているときはやたら虫に食われるくせに、いざ木材になると虫を寄せ付けない。柔らかな木目と堅牢な材質、広葉樹を使ったものには何をどう使ったのか知りたくなる魅力がある。

先日、新潟の製材所「マルユウ」さんを訪ねた。ここはすべての木材を長年かけて天然乾燥させ、木材に薬品を一切使わない代わりにモーツアルトを聴かせるという製材所だ。そこでついつい子どもの遊ぶ玩具と、ぼく用のアタッシュケースを買った。アタッシュケースといってもクスノキで作ったものだ。クスノキから取れる樹液が「樟脳」、かつてはすべての衣類の虫よけに使われていたものだ。重いのが難点だが、目の覚める香りとぎしっとした質感がたまらない。そのクスノキは葉山近くに生えていたものだという。

無垢の製品



家には硬いキハダの窓下のカウンターや、アーユルベーダでは「聖なる木」とされるヒマラヤスギのカウンター、八種類の木で作った文字通りの「木琴」などがある。でもまだ欲しい。センダンの美しい木肌、エンジュの燃えるような木目、悩ましい色のホウの木で作った食器など、たくさん手に入れたいものがある。

今回エコラの森に行き、「NPOしんりん」スタッフのお連れ合いが木地師をめざしてがんばっていた。「木地師(きじし)」というのは木材を使ってお茶碗や皿などを作る職業の人を指す。木の木目や木肌を見ながら作り上げていく。馬搬もそうだが、今や失われたかに思えたホンモノの技術が並んでいる。慣れないと木材をどの方向から切ったら木目がどうつくか見当もつかないが、木地師のつくる木目の美しさは木材の第二の命にふさわしい。

そして食材や食器を並べるならスギがいい。醤油樽、酒樽、かまぼこ板、経木など、殺菌効果と発酵にはいつもスギが使われる。実際、スギと一緒に保存した食材はなかなか腐らない。なんと木材は多様で素晴らしいものなのだろうと思う。

森からみる美徳



そして広葉樹がもっと使われるようになれば、山の森もスギ・ヒノキばかりでなくてもいいようになる。択伐した針葉樹の合間に広葉樹を植えれば、真上にしか光が差さないから通直な広葉樹が育てられる。

日本は樹種がとても多いことでは世界有数の国なのだ。その多様な樹種を使い切ってこそ、日本らしい森の使い方ができるだろう。ただし残念なのは広葉樹は使えるように育つまでに、とても長い時間が必要になってしまうことだ。とてもぼくの寿命では足りない。だから「NPOしんりん」は教育に力を入れる。だって本気で木を大事に思ってくれる人がいないと、この森すら完成させることができないからだ。

この世にムダなものなど何一つないと思う。必要なのはその機能や美しさに気づくことのできる感性なのだと思う。

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