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音と暮らす生活|田中優コラム #57

オフグリッドの音



最近、続けざまに友人と会った。ひとりは「百姓屋敷わら」さんの船越康弘さん、もう一人は「フライングダッチマン」というバンドのリー・タバスコさんだ。わらの船越さんの話は次にして、フライングダッチマンのLEEさんの話をしよう。

LEEさんは今度、滋賀県の元別荘地の山中に家を建て替えて住むそうで、電話で相談するうちに「一度家を見に来れば」ということになり、メンバーのギタリストとともに我が家に訪ねて来てくれた。

LEEさんはとても人柄が良い。福島原発事故後に、「ヒューマンエラー」という曲で一躍引っ張りだこになった人だが、なんの衒いもないし音楽も生活の一部として演奏しているような人だ。彼は家のことだけではなく、電気を自給したいという気持ちもあった。

「それならなんか楽器を持ってきて、音の違いを体験してみたら」と伝え、ギタリストの友人がアンプとエレキを持ってきて音出しをしてみた。

うーむ、音が全然違う。オフグリッドの音はその場で生んだ電気を、その場で交流電気に変えてすぐに音にするので、「もわっ」とした曖昧さがない。ちょっとした音の違いがモロに出てしまうので、シビアでもある。この音で練習していたなら、音に敏感にならざるを得ないだろう。

不快なものに邪魔されない暮らし



その彼らは我が家で過ごすと、「この家はストレスフリーだぁ。ほんとに心地よいし木の良い香りがする」と言っていた。ギタリストの友人は今新たに建てている途中で、しかも普段の仕事は電気屋なので自分の家の配線も自分でするつもりでいる。我が家に来て、いろいろアイデアを持ったようだ。

我が家の外壁に使っているガルバリウムはアースしてある。電磁波対策のためだ。携帯電話など外からの高周波の電磁波はここでかなり減る。加えて窓の「Low-Eガラス」が電磁波を含めて遮断してくれているようで、電波は遮られる。さらに我が家の中は、電磁波が少ない。室内の配線が電磁波の原因となるので、照明のスイッチのために配線を延ばすことはしていない。すべて人感/明暗センサー付きかリモコン操作のものになっている。

建物は天然住宅仕様だから有害化学物質フリーで、生きた木の匂いのする家の上に電磁波の邪魔も入らないのだ。

ライブ・アジトを作りたい



その彼らがギターを持つと、奏でるだけでなくLEEさんは自分のオリジナルの歌を歌っていた。なんだかすごく得した気がする。彼はまるっきり空気を吸うみたいに歌を奏でるのだ。彼がこれから住む予定の場所も、山奥で近所に騒音の心配もなく、音楽ができる場所らしい。

音楽をするためにライブツアーをするのもいいけど、ミュージシャンが作った自分の音楽のアジトに、聞く人たちが訪ねていくライブがあったらいいと思う。そのアイデアにLEEさんも賛成してくれた。彼の音楽は骨太でしっかりしている。要は勢いではなく、実力に裏打ちされているバンドなのだ。

早く彼らのバンドのアジトができるといい。そうしたら森の中で彼らの出したい音を聞きたい。「ヒューマンエラー」は考えたことと音楽を一体化させた面白い曲だが、それ以外の曲もタイトでソリットで、とてもいいのだ。彼らの音の方も多くの人に知らせたいと思う。

FRYING DUTCHMAN “humanERROR”
https://www.youtube.com/watch?v=Q5p283KZGa8


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