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においの環境問題|田中優コラム #58

土鍋とカビ



我が家の設備・調度類は自分で用意した。多くは以前の古民家で使っていたものだが、一部は新たに用意した。その中で、「ま、仕方ないか」と妥協して入れたのがシステムキッチン収納だった。一般的なシステムキッチンは最初から入れる気がなかった。美しいのだが、機能的でないからだ。キッチンの下にいろいろ収納できる扉が付くが、キッチンの下はとても不衛生な場所だ。以前に一大決心の末に買った伊賀物の土鍋、キッチン下の棚に保管していたらカビだらけになってしまった。土鍋はとても重宝するが、最初に炊いたコメを粥のように煮る必要がある。でんぷんや栄養分を吸い込んで土鍋から水が漏れなくするためだ。そのしみ込んだ養分にカビが生えてしまったのだ。キッチン下のスペースは、土鍋を保管するには一番には良くない場所だと後から聞いた。

システムキッチン以外の選択肢



そこで我が家のキッチンは、下をがらんどうにすることにした。何も置かず、スギ板で棚をつける。スギなら腐敗菌を抑えると同時に発酵菌に優しい。その下は少なくとも掃除機の頭が入るだけの空間にした。そうすれば食べ物滓などが落ちてもすぐに掃除できるからだ。

そんなキッチンにするにはシステムキッチンは不都合だ。そこで骨組みだけのキッチンを購入したい。そこで調べて見つけたのがIKEAのキッチンセットだった。骨組みに棚や引き出しをオプションとして選択する。それなら棚や引き出しを購入しないだけですむ。そう考えてIKEAのキッチンを購入した。キッチンの天板の下と鉄骨の骨組み以外の部分に集成材の板が貼られている。この集成材の部分は接着剤のような化学物質が使われている。店で臭いを嗅いで、これなら大丈夫と買って来たものだ。


家具屋さんのにおい



そのIKEAの店舗に久しぶりに行ってみた。自宅に購入したほどだから悪いイメージはなかったが、店に入った途端化学物質の臭いが鼻を衝く。「早く出たい、早く外の空気を吸いたい」と願ったのだが、IKEAの店の構造がそれを許さない。順路に沿って二階全部のフロアを抜け、「先に外に出る」とメールで家族に伝える。ところが一階に降りるとまた順路で、出口まであと何百メートルと表示してあるのだ。しかも混み合った店内をすり抜けなければならない。久々に閉所恐怖症の気分になった。

IKEAに行くにはガスマスクが必要だと思った。これまで何も思わずに来れていたのは、嗅覚が麻痺していたからだと気付いて愕然とする。このたくさんの人たちは、かつての自分のように臭いに気づかずにいるのだ。気づいてほしいけど、普段の住まいがこうした臭いにまみれていたら、気づくことはできないだろう。化学物質の臭いのない家に住んだから気づくのだろう。臭いの環境改善が必要なのだと思う。

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