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木材の「ウイルス不活化」③ | 田中優コラム #155

木材の「リグニン」の抗ウイルス効果


 そもそも木材というのは、例えて言えば「鉄筋コンクリート」と同じ構造になっている。鉄筋に当たるのが「セルロース」で、コンクリートに当たるのが「リグニン」だ。このリグニンがセルロースを取り囲むことで強さを維持している。

 しかもありがたいのは、この「リグニン」自体にも「抗ウイルス効果」があるのだ。その薬理効果を応用しようという研究が続けられている。しかしリグニンこそものすごく多様で、樹種によって内容が異なるのだ。「~~の木」ならこんな効果がという形で違ってしまうのだ。

 私たちの生活をウイルスが脅かしているように、植物に対するウイルスもいる。木は動けないので、その分たくさんの方法でウイルスを不活化する。ウイルスを不活化させるだけではない。ウイルスの結合する「スパイク蛋白質」を壊したり、本体のRNAをDNAに逆転写することを邪魔したり、多種多様な抵抗力を持つ。

 しかしだからと言って、ウイルスは必ずしも敵ではない。ウイルスの感染により進化した例は動物の方がわかりやすい。働きハチは、外敵が来た時に「死を覚悟して攻撃行動に出る」ものと、逃げ出すハチがいるそうだ。この攻撃するのは、脳内がウイルスに感染しているかどうかによるそうだ。ちなみにこのウイルスは「カクゴ(覚悟)ウイルス」と命名されている。

 植物ももちろん「干ばつ」に強くなったり、「高温」に強くなったりする力をウイルスから得ている。ウイルスは二酸化炭素の蓄積に至るまで様々な役割があるそうだ。ヒトも母体は血液型の異なる胎児であっても異物とみなさずに育てるが、これは「胎盤」の機能のおかげだ。その胎盤の機能はウイルスからのプレゼントと考えられている。しかしこれらはまだ氷山の一角にすぎない。

 私たちの存在は他の様々なウイルスや生命体と共に生きている。それらを殺すのではなく共存して生きていくための知恵が必要なのだと思う。そのときにも自然の素材の力を借りることができないだろうか。プラスチックではなく木材だったり、抗生物質でなく腸内で作り出される免疫機能だったり。

 何よりヒトは自然の素材と、生命体としてずっと長く共存してきたのだ。そこに未来への扉を開く鍵があるのだと思う。リグニンの研究は、まだ始まったばかりだ。

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