NPOしんりん
先日、木材を供給してくれている「くりこまくんえん」に出かけ、その森のお世話をした。夏に「皮むき」しておいた木々を伐採しにいったのだ、毎年年二回、必ず出かけている。二泊三日のツアーの初日の夜はぼくが話した。内容は前に述べたネオニコチノイド農薬や薬剤漬けにされている木材の話だ。二日目は「くりこま」の大場さんが話す予定だったが、趣向を変えて山仕事を実際にしてくれている「NPOしんりん」のきこりさんたちが並んでパネルディスカッション形式にし、ぼくがコーディネートすることになった。
牛と馬と行う林業
各自がそれまで何をしていたか、森でどんなことをしているかの話をした。なにせ変わった林業をしているところだ。森の下草はウシに食べてもらい、下草刈りの人の手間を不要にしている。今回は出かけたのに、ついにウシたちに会えなかった。森の奥で草を食べ、自立して暮らしたままでいるのだ。
ウマたちには会えた。木はでんぷんの減るお盆から冬の時期だけ伐る。細い小道でも木材を搬出できるウマたちは、冬の時期がかき入れ時なのだ。重い木を運んでくれるウマたちは生き生きと働いている。そんな動物園のような森なのだ。
ある参加者が「ここで働いて何に驚きましたか」という質問をした。しかし誰も驚いたとは言わない。なぜなら彼らのほぼ全員が林業をするのが初めてなのだ。だからウマにもウシにも驚かない。
シロウトだからこそできること
その説明を大場さんがしてくれた。「ここで働くのはシロウトの方がいいんですよ。ウマやウシと一緒に働くなんて今の林業にはあり得ない。だからシロウトであった方がいいんです。いまや誰もやらなくなってしまった林業を、森を守るためにやっているんですから」と。
だから木を薬品に漬けないことも、除草剤を使わないことも不思議に思わない。むしろこれまでの林業の「常識」を知らない方が自然を傷つけない林業ができるのだ。だから皆伐もしない。森林組合ならカネになる大きな木から伐採してしまうが、大きな木(母樹)と小さな次の時代の木だけ残して伐採する。皆伐せずに自然に次の時代の森を残せるようにするのだ。選択した木だけ択伐するので手間はかかるが森は常に残る。一時的な儲けよりも、森を大切にする林業だ。
金儲けのためでない、シロウトだからこそできる林業なのだ。