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「シックハウスの猫」アレルギー|田中優コラム #100

豊田のけーちん




ぼくの「弟子」を名乗る女性がいる。鈴木桂子、通称「けーちん」だ。彼女は今や豊田市に編入された山の中で、「農家民宿」の女将をやっている。その建物がまた良い。化学物質のない建物で、寝具にはアレルギーを起こさない「エンドレスファイバー」を使い、美味しい食事以上に面白いイベントを催している。

そこには犬がいて、以前は馴れなくて吠えてばかりいたけれど、いつの間にか「吠えても無駄」と悟ったのか吠えなくなった。さらに猫もいる。猫はここを開けろとばかりに扉の前で「ニャーゴ」という。開けてやってもさも当然とばかりに出て行って、しばらくすると戻ってきて外から「ニャーゴ」という。まるで自動ドアの部品の一つになった気にさせられる。

猫アレルギー



でもふと思った。彼女はたしか「猫アレルギー」だったはずだ。猫を飼っている友人のところに泊まりに行って、窓から頭だけ外に出して寝ていたという話を聞いたことがある。なんだか窓の外に生首だけ出ている姿を想像して、「こえーよな」と思った記憶がある。そこで聞いてみた。

「猫アレルギーじゃなかった?」

「うん、そうなんだけど、家が化学物質使っている家の中に住んでいる猫には反応するんだよね、だけどそうじゃない家にいる猫だと大丈夫なのよ」

初耳だ。猫アレルギーにそんな違いがあるなんて。

ちんちゃん亭




「でもね、猫が外でマムシを捕まえてきて持ってくるのよ。それがちょっとねぇ」

それには身の危険を感じる。マムシがとても美味なら許してもいいのだが。猫はマムシが平気らしい。どういうことだか知らないが。

そして彼女は猫アレルギーも発症せずに、元気に共生している。ということは「猫アレルギー」じゃなくて、「化学物質アレルギー」だったんじゃないかとも思うが、医師じゃないぼくとしてはそれ以上追及しない。

この宿の名前をつけるとき、これ以上ないほどダサイ名前にしようと考えたそうだ。すごく親切な旦那の通称は「けーちゃん」という。そこで「けーちん」と合わせて「ちんちゃん亭」と名付けた。一度ぜひ出かけてみるといい。好きに過ごすにはとてもいい宿だ。だけど普通の宿を期待する人には絶対に向かない。今の仕組みに反して楽しい場なのだ。

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