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新築を「冒険」にしないために|田中優コラム #122

温故知新の家造り



そうして温故知新の家造りをすると、何とも強くて快適な家ができる。我が家は高くつく石場建てにはできなかったが。

でも日本でもちゃんと中古になっても値段の付く住宅を建てたい。築何年、駅まで何分、学校やショッピングセンターまで何分で値段の決まるような住宅ではなく。要はその土地に発生する災害に耐えられれる堅牢さを保ち、健康を害する化学物質を極力使っていないことが住宅の価値になったっていいはずだからだ。

ウェイティングリスト



そのこともあって、天然住宅を対象にした「ウェイティング・リスト」を作った。万が一天然住宅が売りに出たら、15年でゼロになるような価格でなく、価値を認め、買いたいという人たちの順番待ちだ。

すると意外とそのリストに参加する人たちが増えてきた。おそらくは化学物質が苦手な人がその列に並んでくれているのだと思う。堅牢さも評価されているのかもしれない。

そのことは逆に、15年で評価ゼロにしなくていいことも意味する。買い手がつくのだから、高く売ってしまえばいい。将来は「天然住宅です。ヤフオクに出品しました」というような人が出るといい。そうすれば、自然に中古住宅の市場が作られていくことになるのだから。

住み継ぐ家に




そう、家は建てて終わりではない。住み継いで行ける住まいならば次に住む誰かのための家になる。それが本当の「社会資産」なのではないだろうか。家を建てた人は自分のための支出をしたにすぎない。ところがその建物を次世代の人が評価して社会的に有用なものになる。

天然住宅を建ててその娘さんが大きくなり、すっかりアトピーも治って肌もつるつるになったという人がいる。その人が娘さんから言われるそうだ。

「出ていくことになったらお父さんだけ出ていってね。この家は私が住むんだから」と。ちょっとだけお父さんに同情するが、良い話だと思う。

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