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温暖化対策から解決へ|田中優コラム #135

地球温暖化防止策の欠点



地球温暖化防止をしたい。そう考えたとき、とても大きな欠点があった。
何かというと、地球温暖化を起こしている原因者を考えたとき、絶望的な気持ちになることだ。

例えばこの日本で考えると、温暖化を進めている国内の二酸化炭素排出量の内、実に半分までがたった129事業所からの排出量によって占められているのだ。
自分が起こした問題なら、自分のこととして対策することで解決できる。
ところがそうではないのだ。

よく言われるようにその原因が「人々のライフスタイル」の問題だったら人々が努力すれば解決できる。

ところが少なくとも日本で考える限り、私たち自身が解決できることではないのだ。ほとんど政府が心を改めて解決を目指さない限り解決できない。
元は人々が選挙で選んだのは事実であるものの、政府を改めさせるのは多くの人たちと協力しない限り解決できない。

しかし、日本国内の世論はマスメディアの無責任な報道によって作られている部分が大きく、「地球温暖化懐疑論」のような面白がらせるための無責任な論調まで存在する。
とてもではないが「つける薬もない」と思わせられるのだ。

4パーミルイニシアチブ



でもなにか市民が主体的に参加できる活動の余地はないものだろうかと考えていた。その方法を考えついたのだ。それは前回紹介した「4パーミルイニシアチブ」を調べながら考えていったときだった。
その内容をもう一度掲載しよう。

『これはフランス政府が地球温暖化防止に提唱しているものだ。その原理は極めて簡単だ。

現在、地球全体で人間が経済活動によって大気中に排出している炭素は、年間約100億トンある。
そのうち「樹木や海洋生物」が吸収するなどして約57億トンの二酸化炭素が大気中から除かれ、結果として地球温暖化を進めているのは、「43億トンの大気中に増えている二酸化炭素」が原因になる。
この43億トンの二酸化炭素をどこかに確保することができれば、大気中の二酸化炭素は増加しないことになる。

一方、土の中には、1兆5000億~2兆トンの炭素があるとされ、うち表層の30~40センチに約9000億トンの炭素があるとされている。
この9000億トン土壌に確保されている炭素を増やせば地球温暖化が止められる。
それは「土壌の中の炭素を、毎年0.4%ほど増やすことができれば、43億トンの排出分をほぼ帳消しにできるというわけだ。
つまり農地が0.4%(すなわち4パーミル)増えるだけで、その分の二酸化炭素を減らすことになる、というのだ』

ナマコを裏返す



これならば市民が土壌の中に炭素を増やすだけのことで、地球温暖化の進行を止められる可能性が生まれる。政府の号令を待たずして、私たちの努力によって解決できる。

これを思うとき、ナマコの話を思い出す。
ナマコは肛門から裏返すと外側と内側が入れ替わる。
チクワのように、ただの穴の開いた筒なのだ。
だから裏返すと全く別なことができる。

それと同じように、市民が炭素を確保する手段を持つことができれば、政府や大企業に頼ることなく、地球温暖化に「有効」と思える解決策を見出していくことができる。

家から木炭をつくれたなら



岡山で新たな新築工事が始まった。
小さな住宅で、百坪を越える敷地の中に、建坪24坪ほどの住宅だ。

しかし天然住宅らしくたっぷりの木材を使う。
しかも天然乾燥させた木材なので、色気のある小豆色をしていて、匂いもそのまま残っている。
やや白い木肌は梁に使ったアカマツと土台を支えるヒノキだ。
太い大木のまま使っている柱が堂々として見える。

木材の量としては14立方メートル程度、
重さにして(主たる材料はスギなので、全部スギとして比重が0.6として計算して)8.4トンになる。

これを使い終わったら「木炭」にしたとするとほぼ1.68トン、
さらに炭の重さのうち、炭素の占める部分はほぼ90%だから、純粋な炭素分は1.5トンほどになる。

これを土に混ぜ込んで土壌に入れると、その分だけ炭素を大気中に戻さずに確保することができる。
それは一般家庭の排出する二酸化炭素量と比べると1年分以上になり、1年半に排出した二酸化炭素の量と同じくらいを土壌中に隔離できたのと同じ効果があることになる。
あくまで解体したあとの話だが、解体したらそれを炭にして土地に撒けば、それだけ炭素を隔離できたことになる。無垢の木材であればそれを問題なくすることができる。合板や集成材ではそうはいかない。

家の寿命とCO2排出量



それでは解体する以前はどうだろうか。

やはり大気中に放出せず、家として隔離できたのだからその分だけ地球温暖化を起こさせないことになる。つまり建っている間の長さだけ、「炭素として隔離して保存する」ことになり、その分、地球温暖化を防ぐことになる。そこから対比させてみると、鉄とコンクリートで家を建てるのではなく、木造で建てることの素晴らしさが見えてくる。

プラスチックや鉄、アルミなどで建てるのではなく、生物が再生することのできる木材で建てていれば、それは再生可能エネルギーと同様に持続可能なものとなるのだ。

誰かの出した分まで帳消しに



さらに我が家のように自然エネルギーを利用した場合はどうなるかを計算してみた。
なんと日本の一般家庭と比べてマイナス82%となっていた。
この時点で放出量の57%の二酸化炭素が森などに吸収されていることを考えると、温暖化させていないことになる。

さらにこれに加えて建物に使った木材を将来的に炭にして、炭素として土壌に混ぜ込むなら、他人が放出した二酸化炭素の分までも帳消しにしてあげたことになる。

つまり「温暖化させない」を越えて、「誰かの出した分まで帳消しにできる」ということになる。

だからと言って二酸化炭素を放出している企業や政府を免罪するつもりはない。
しかしこの計算に気付いて、私たちにできることはこれまで考えていた範囲を超えて大幅に広がる。もしかしたら、地球温暖化を防ぐ手立てがあるかもしれないのだ。
未来は悲観しなくてもいいかもしれない。
私たちの活動次第で解決できるかもしれない。その可能性のあることがうれしいのだ。

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