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アマゾンの山火事|田中優コラム #136

アマゾン火災




アマゾンの森が燃えている。アマゾンに行ったのは1992年、ブラジル会議の時だ。今からだと26年前になる。それでもまるで最近行った場所のように感じる。同じような場所にその後出会っていないからかもしれない。

アマゾンはとんでもなく広大で、全体を見たつもりには到底なれない。
なにせアマゾン川の中州だけで九州の大きさがあるのだ。
飛行機でアマゾンからリオに行くだけでも一日かがりになるのだ。そこに山火事が起こった。

今回の山火事は毎年の乾季に起こることで、今回が特別大事件ではないという意見や、政治的に問題にされただけだという意見もあった。
実のところどうなのか。

ぼくの信頼するいんやく智也さんはブラジルに長くいて、知り合ったのもブラジルだった。
その彼によればブラジル大統領は相当強権的で、大企業の利権に寄り添い、先住民などの人権に対し理解がないようだ。
そしてブラジルの半乾燥地であるセラード地域の開発や、アマゾンでの牛の放牧地開発に対して非常に甘いようだ。

そしてそれに抵抗する市民勢力を嫌い、「山火事はNGOのせいだ」などと無責任に放言している。「ブラジルのトランプ」と呼ばれる存在なのだ。
山火事は過去最大ではなかったものの、それを招いてもおかしくない存在なのだ。

しかし日本からは遠い。
地球の裏側にあるので最も遠い場所なのだ。
そのこともあってやれることは少ない。
身近な問題ではなくやれることも少ないし、ただ燃やされていく森の有様に、ただ不快で悔しい思いをしているしかない。

奇蹟の森




世界地図で見てみると、アマゾンは赤道付近から南回帰線につながる周囲にある。この回帰線のあたりということは、砂漠になっていてもおかしくない地域だ。事実、ブラジルには砂漠のような地域もあれ、セラードのような生物の多様な半乾燥地もある。日本はそこの開発を政府開発援助の資金を用いて行い、その不思議な生態系を破壊しておきながら、「成功した援助例」として宣伝している。なんとそれを‘成功例‘だからといって、日本とブラジル政府の共同開発で、アフリカのモザンピーグで実施しようとしている。

地理的に見て、アマゾンの熱帯林地帯は当然の存在ではない。
むしろ奇蹟的に存在する南回線近くに残された森なのだ。
その森が燃えていくことに危機感を覚える。
持続可能な暮らしを考えようとすると、こうした事態に目が向くのだ。

黄金郷にあったもの



かつて、アマゾンには黄金郷と訳される「エルドラド」が実在したようだ。
その昔にアマゾンを探検した探検家がいて、その記録には「黄金でできた都を見た」という。
いよいよ大航海時代になって大勢がその話を調べようとアマゾンを探検した。
するとそんな人口が集積した都もなく、人々は未開人よろしく少数の集まりが点在するのみで、そんな黄金郷などなかった。

しかし後にわかったのは、かつてはアマゾンの各地に「テラ・プレタ」と呼ばれる黒い土の耕地があり、アマゾン各地のそれを集めると、フランス一国の大きさになった。「テラ・プレタ」の土は連作障害も起こさず、豊かな作物をもたらしていた。ところがその豊かさを壊したのは少数の先進国から来た人々がもたらした「伝染病」だった。
もし伝染病に先住民が倒れることがなかったら、フランス一国分の広さのもたらす農作物は、黄金郷を作っていただろうと今や広く信じられるに至ったのだ。

それほどの可能性を持つ土地を、新たな侵略者は破壊してしまったのだ。
今燃え広がるアマゾンの山火事も、別な可能性をなくさせているのかもしれない。
それをたかだか牧畜のもたらす金銭利益のために破壊していいはずがない。
知られてもいない未知の動植物をこのまま失わせてはいけない、と私は思う。

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