テラプレタ
すでに述べたようにアマゾンにはかつての繁栄都市と、大きな未来の可能性があった。それを失わせたのは新たな侵略者の持ち込んだ伝染病だった。
失われる前には大きな文化圏があって、今なおその土地に存在しないものの単語がある。それは大きな文化圏のあった証拠と考えられている。
そしてまた飛行機からアマゾンの土地を見てみると、いくつもの集落跡があり、それをつなぐ道路網のあったことが確認されている。
ほとんど奇蹟のような話だが、エルドラドを下支えしたのは「テラプレタ」の土壌だった。
この炭の入った土を作り始めたのは少なくとも8000年前からだというのだ。
テラプレタの奇蹟より人間がそんな昔から作っていたことが奇蹟だ。
砂漠地域になってもおかしくなかったアマゾン
奇蹟と言えばもう一つ、アマゾンの位置だ。アフリカの地図で見るように、赤道から少し離れた南北回帰線の周辺は砂漠地帯になっている。これは赤道で巻き上げられた水蒸気がその場で積乱雲を作って雨を降らせ、水分を失った空気が南北回帰線地域に降り注ぐためだという。
ところが南アメリカでは南回帰線に雨を降らし、砂漠地域を作らなかったらしい。
水蒸気を持ち上げて雨を降らす地域が違っているようなのだ。
どういうことなのか。どうやら森林地域であることがその原因の一つになっているらしい。
ここに水面があったとして、そこからは当然水蒸気が上空に上がる。
しかしそこが森だったとしたらどうだろう。
森は水蒸気を上げるだろう。木は焼けないために、葉の裏側から水蒸気を出すからだ。
では水面と森とどちらが水蒸気を多く出すだろうか。
これは結局表面積が大きい方が水蒸気を出す。つまり森の方が水蒸気量が多いのだ。
砂漠化をもたらす商業伐採
これはアジアの熱帯林地域で実感したことだ。
中でも大きかったのは日本の商業伐採で、森の面積を著しく減らした。
すると起きたのは降水量の減少だった。
立ち上る水蒸気が作る積乱雲を減らし、定期的に降るはずの雨の量を減らしたのだ。
これと同じことがアマゾンで起きるのではないかと懸念している。アマゾンから立ち上る積乱雲を減らし、アフリカのように砂漠地帯にしてしまうのではないか。そうなってしまったら、多分もう二度と森は戻ってこないだろう。
それが恐ろしいことなのだ。
奇蹟的に残っていたアマゾンの森は、自分の力で降雨地帯を作り出していたのだとすれば。
もう戻らなくなってしまうのだ。
私はそれを懸念するが、実際に森林火災が起きている地域を見てみると、なんとアマゾン森林地帯の南側、南回帰線の周囲なのだ。
この最もデリケートな地域が燃えている。このことがどんな未来をもたらすのか。