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家を担保にした超・長期ローンを|田中優コラム #18

経年変化を確認できる見学会



「天然住宅が長く使えるのはわかったけど、でも同じ場所に長く住まないかもしれないし、第一300年先なんてどうなるかなんてわからないじゃないか」という声も聞く。天然住宅を始める前から相根さんの「アンビエックス」は、住宅を建て続けてきている。おかげで20年を超える建物を案内することもできる。天然住宅では毎月「建物見学会」をしていて、そこで新築から建築後20年経った建物まで見ることができる。しかも見学させていただく建て主の方のご好意でするので、直接不都合なことや問題点などを訊ねてもらうことができる。

普通の住宅ではこんなことは不可能だ。経年劣化が著しいので20年経てば建て替えの話が普通に言われ、結露のせいで床はブカブカしだし壁の内側からはカビ臭が、ベニヤはまくれ上がって軒下に垂れ下がり始める。ところが天然住宅ではほとんど劣化していない。これまであったのは、コンクリート造のときの湿気の問題ぐらいだ。コンクリートは打設してから一年程度、水分を出し続ける。この湿気が合わない壁紙を汚くしたり、湿気の高さから快適でない状態を作ったりする。もちろんその問題点も対策している。

おかげでその後の建て主さんたちとも良好な関係があるから、こうした見学会を実現できるのだ。

長く持つことの価値を価格に



しかし「長く住み続けるとは限らない」という点は何ともしがたい。でももし転居するとしても、ちゃんと建物も評価されて価格がつくなら安心して売却できる。日本と欧州の違いは、中古住宅の価値の違いが大きい。日本では15年でゼロだが、たとえばアメリカでも百年経った住宅でも四分の一の住宅価値が残る。ニューヨークでは百年経っている建物の方が価格は高かったりして、高所得者でなければ入居できないほどだ。良い住宅を建てれば価値が減価しない。だから「資産」になるのだ。

日本では地震・台風・火事があって長持ちしないというなら、法隆寺や歴史的建造物はなぜ残っているのか。それらに耐え得る建物にすればいい。日本では地震対策が重要だが、あるメーカーが造った耐震住宅は想定した震度以下で崩れてしまった。その一方で、建築基準法上は簡単に認められない『石場建て(古い建造物によく見られる石の上に乗せられているだけの建物)』の方は、建物が四股を踏むだけでそのまま壊れずに残る。良い方式を捨てて地震のない国の基準に合わせたことが間違いの始まりではないか。ところが石場建てにしようとすると、構造計算などに余分に百万円近くの費用がかかってしまう。現状の制度と折り合うぎりぎりの線で、頑丈な住宅を建てる努力をしている。


使い捨ての住まいから資産になる住宅へ



天然住宅ではたとえ15年経っても300万円て売れることを前提にして、天然住宅バンクから300万円の融資をすることにした。15年経った時に他に売ろうとすれば、価値ゼロになった挙句に解体費約300万円と合わせてマイナス300万円の価値になる。それをあくまで審査しての話だが、逆に300万円で引き取ろうとするのだ。その差実に600万円になる。

なぜそんなことをするかと言えば、中古住宅の価値が認められていかなければ、今後も使い捨ての住宅しか建たなくなるからだ。新築して15年経った時点で、天然住宅バンク側に300万円+金利の返済と相殺して住宅を譲るか(もちろん地価分は別途通常価格で買い取る)、そこからローンを払い始めるかの選択ができるのだ。さらにもうひとつ期待していることがある。それは300万円を最低価格として、ヤフーオークションなどに出品して売られていくことだ。そうすれば従来になかった中古住宅市場を作ることができるようになるだろう。

なにせ一切の有害物質を使っておらず、300年は持つように設計された住宅だ。今後さらに増加するアトピーや化学物質過敏症の人たちが住むことのできる住宅だ。正しく言うと「軽度の化学物質過敏症の人なら」ということになるが。そして天然住宅を建てられるほどの給与を得ていない天然住宅スタッフたちにとっては、この制度が整えば中古の天然住宅なら入手できるかもと期待している。

天然住宅バンクは、戦争や環境破壊のような望む方向と正反対のところに使われる貯金を止めて、自分たちの望むところに融資していこうとするものだ。これがうまく機能するなら社会を変えられるかもしれない。使い捨ての住まいから資産になる住宅へ、それが実現したくて作った仕組みだ。でもぼく自身はそんな時期まで生きていられる自信がないので、若いスタッフに「それでもやってもらえるか」と確認してから作ったのがこの制度だ。大事にしながら育てていきたいと思う。

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