傾斜地の建築には要注意?!
こんにちは、設計部の早田です。
過去にお客様からいただいたご相談をもとに、家づくり計画に役立つ豆知識をお届けしたいと思います。
一回目のテーマは、「傾斜地」での家づくりについて。
傾斜地に家を建てる最大のメリットは、眺望や風通しの良さではないでしょうか。
このスケッチのお客様(以下、K様邸)のお土地も、街中の高木が生い茂る公園に面したとても見晴らしの良いところにありました。
他には平坦地よりも土地の価格が比較的抑えめな場合が多いようです。
見晴らしも良くて価格も安いなんて、いいことづくめですよね?
しかし、気をつけなければならないこともあります。
傾斜地の建築にはどんな費用がかかる?
一見、良いことづくめのようにも思いますが、傾斜地での建築は、平坦地に比べて、主に下記の項目で費用が余分にかかることを見越しておく必要があります。
・基礎工事
・仮設工事
・雨水対策
・雑排水対策
・湿気対策
ひとつずつ見ていきたいと思います。
基礎工事
→建築物を支え地盤に定着させるコンクリートの部分を基礎と言います。傾斜地に住宅を建てる場合、平坦地に比べ、まず土を多く掘る必要があります。この掘削(くっさく)費用や残土の処理にお金がかかります。
また、地盤内における土による圧力(土圧)も受けるため、基礎の鉄筋、コンクリート量も増えます。その分の費用の増額も見ておくべきでしょう。
建築計画的に、土に接する面積を小さくすることで(掘削や基礎の面積を減らすことで)建築費用の増加をある程度抑えることができますが、さらに緻密な構造計画や施工計画が必要となり、設計の難易度は上がります。
仮設工事
→段差があるため、資材の運び入れが大変です。重機をあげるリフターや、材料を手運びする可能性もあり、その分の費用は見越したほうが良いでしょう。
雨水対策
→斜面上方より流れてくる雨水や、地中に浸透している水をどう流すかの計画をしっかりと立てなければなりません。建物によってせき止めてしまうことがないよう、工夫が必要です。
雑排水対策
→雑排水とは、トイレ、浴室、台所等の排水のことです。この敷地は道路が下の方にありましたので問題はありませんでしたが、道路が上の方にあって雑排水を下の方へ流せる先がない場合、上の道路に流すためにポンプアップしなければなりません。平坦地では必要のない機械類の設置が必要になります。
湿気対策
→建物の一層目は、いわゆる地下スペースになりますので、特に居室にする場合、土に接している部分のコンクリートに防水層をつくったり、内側は壁を二重にするなどの対策が必要です。また、排湿対策の換気計画も必要になります。
いずれにしても100%完全な湿気対策というのは不可能なので、どれだけリスクを抑えられるかがポイントになります。
このように、傾斜地に家を建てる場合、通常では考えなくても良いことに注意が必要です。そのためにかかる費用は、一概には言えませんが、平坦地に建てるより数百万〜千万円規模でプラスになる場合もあります。
K様はもともと、この地に住んでいました。
当初はリフォームの計画でしたが、現在の耐震基準に合わせると、基礎ごとやりかえる(大掛かりな耐震補強の)必要があり、建築費は新築する場合とあまり変わらないことが分かりました。
ですので、途中から建て替えの計画に移りましたが、解体費用も含めるとその費用の高さから残念ながら実現には至りませんでした。
なかなかハードルの高い傾斜地での家づくりですが、もちろんその特徴を生かした間取りのご提案もできます。(ちなみにK様邸は一階部分(二層目)は飲食店にする予定でした)
設計者としてはむしろ厳しい条件があるからこそ腕の見せ所ですし、燃えますね。
気をつけるべきことは念頭に置きつつ、最終的にはお客様が納得のいく土地選びをしていただけたらと思います。
参考実例写真
(崖地での実例)
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