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長く暮らせる住宅づくり|田中優コラム #224

 
前回、田舎の住まいの良さを書いたが、もちろん悪さもある。特に嫌だったのは虫や動物の暮らすエリアと近すぎることだ。我が家を天然住宅に建て替える前、夏場になるとムカデが家の中に十数匹出た。それどころかイタチかタヌキが台所の土間によく出た。キツネは夏場になると庭で休んでいたりする。人の暮らすエリアに虫でも動物でも入ってほしくない。あくまで衛生的に、綺麗なままに暮らしていたいのだ。
 
このムカデ対策には今の家を建てるとき、家の周りすべてに「ムカデ返し」をつけた。といっても固有名詞ではない。家の基礎と土台を分けるところに、金属製の庇を伸ばしてつけたのだ。調べてみると、あんなにたくさんの足があるのに、ムカデはつるつるしたところを登るのが苦手だ。
 
オーバーハングした金属板をつけただけで、ムカデは登ってくることができなくなる。つけた年にはオーバーハングした金属の下にムカデが死んでいた。何度も登ろうとして落ち、ついに力尽きたのだろう。動物はもちろん入らなくなった。
 

玄関ポーチの蹴上にステンレス板も巻き、ムカデが登ってこられないようにした

 
それともう一つは家の土台と腰板にヒバを使ったのが良かった。ヒバは別名「蚊殺しの木」と呼ばれるほど虫を寄せ付けず、殺菌性も高い。おかげで家の外には蚊がたくさんいるのに家に入ってこない。それは住まうにはとても良い。
 
でも10年経ってこの効果が薄れてきた。たまに家の中で蚊を見かけるのだ。かといって蚊取り線香や殺虫剤を使いたくはない。子どもがいるせいもあるが、私自身が蚊取り線香の臭いをかぐと喉が痛くなるのだ。
 
だから石川県の友人に頼んで、ヒバエキスのボトルを送ってもらった(ヒバというと青森だが、石川県の能登半島には「能登ヒバ」と呼ばれるヒバがある)。内容はヒバの精油分と木酢液が混合されたもので、どちらも虫が嫌がる成分だ。これを薄く塗ることで効果を持続させたいと思っている。
 

自宅は板倉造りで建築した


それと大事なのが木造で家屋を建てる時の木材だ。これは絶対に低温乾燥させたもので、高温で機械乾燥させた木材を使ってはならないと思う。低温乾燥のスギ材には殺菌効果があり、家の中のダニなどはいられなくしてくれる。ほんの数日でダニは死滅してしまう。これは木の中のリグニンという成分が精油分として木材中に残ったもののおかげだ。またこの精油分が木のしなやかさと強度をも担保してくれている。
 
80℃を超える高温乾燥では、このリグニンが変質してしまうのだ。木造家屋がかねてから長持ちしてきたのは、木材を数年間も外で乾燥させる(これを天然乾燥と呼んでいる)ことで、木材の質を保たせていたのだ。昔からの大工に言わせると、高温乾燥材は刻もうと思ってノミを打っただけで割れたりするので使えないというほどだ。
 

 
この木を生きた時の状態のまま使うためには80℃以下の中温乾燥をしないと木を活かせない。天然住宅が「くりこま木材」にこだわって使うのは、乾燥や木材の質に同じようにこだわってくれているからだ。これなら100年以上使うことができるし、スギの匂い成分も残したままで強度ばかりか粘りも持ったままだ。
 
地方の家といっても、ここ50年の住まいは良いものばかりではない。ベニヤと接着剤だらけの死んだ木を使って建てた民家ばかりなのだ。都会の中古住宅同様、健康にも良くなく強度もしなやかさも失われた短命な住宅になっている。


建てるのを手伝ってくれた友人が我が家に来て、「何年経った?」と聞いてきた。「ほぼ10年経つ」と答えると、「全然古くなってないな、匂いも残ってるし」と言った。

この違いが木を活かしたまま住宅にした強みであると思っている。天然住宅で建てた家を見ていると、それが当たり前だ。生きた木として木材を使うことの違いがこの違いなのだと思う。
 
天然住宅が気になったら、営業スタッフに頼んで以前に建てた家を見学させてもらったらいいと思う。モデルハウスはないから、現に誰か住んでいる状態の家を頼んで見せてもらうことになる。その家のすごさを感じてほしい。長く使える家の違いを感じ取ることができるかもしれない。
 

築8年の天然住宅。木材が飴色になり新築時よりも艶やかになっている

 
 

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